世界複合遺産「ティカル国立公園」への我が国からの国際協力
グアテマラ共和国ティカル国立公園
グアテマラは、国民の約半数がマヤ系先住民という、かつて全土にわたって古代マヤ文明が栄えた地である。国内北部のティカル国立公園は、1979年にユネスコの世界複合遺産に登録された。自然遺産としては、約576平方キロにわたって生物多様性を保持しながら広がる熱帯雨林である。文化遺産としては、マヤ文明最大の古代都市遺跡の一つで、約100平方キロの都市範囲を有し、紀元後2世紀から10世紀までの間に少なくとも33人の王によって統治されていた。ティカルは、1956年から熱帯ジャングルが切り拓かれ、1960年代に大規模な発掘調査や修復作業の対象となった。1980年代には観光開発事業の対象となり、国立公園の外に空港が整備されるとともにティカル遺跡までのアクセス道路が舗装された。現在ではグアテマラを代表する文化観光地となっている。
ティカル国立公園文化遺産保存研究センターの設立
文化観光地として発展した反面、遺跡の保存や維持管理が行き届いておらず、近年には修復された建造物に保存上の問題点がみられるようになっていた。事態を憂慮したグアテマラ政府からの要請により、2005年度から国際交流基金の文化協力主催事業としてティカル国立公園文化遺産の現状診断調査と協力可能性調査が行われた。その結果を受けて、熱帯雨林という過酷な自然環境の中でも持続可能な形で、また長期的な視野に立って国際協力を進めるべく、2010年度に文化無償資金協力のスキームをつかって「ティカル国立公園文化遺産保存研究センター」の建設が両国間で合意された。