マヤ文明世界遺産の遺跡マネジメント−ティカル北のアクロポリスプロジェクト−

事業名称
マヤ文明世界遺産の遺跡マネジメント−ティカル北のアクロポリスプロジェクト−
国名
グアテマラ共和国
期間
2012年~2016年
対象名
ティカル国立公園
文化遺産の分類
記念物、 遺跡
実施組織
-
出資元
-
事業区分
機材供与、 施設設備、 意識啓蒙・普及活動、 基礎研究、 地域開発、 人材育成、 保存修復

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背景

Background

世界複合遺産「ティカル国立公園」への我が国からの国際協力

グアテマラ共和国ティカル国立公園
 グアテマラは、国民の約半数がマヤ系先住民という、かつて全土にわたって古代マヤ文明が栄えた地である。国内北部のティカル国立公園は、1979年にユネスコの世界複合遺産に登録された。自然遺産としては、約576平方キロにわたって生物多様性を保持しながら広がる熱帯雨林である。文化遺産としては、マヤ文明最大の古代都市遺跡の一つで、約100平方キロの都市範囲を有し、紀元後2世紀から10世紀までの間に少なくとも33人の王によって統治されていた。ティカルは、1956年から熱帯ジャングルが切り拓かれ、1960年代に大規模な発掘調査や修復作業の対象となった。1980年代には観光開発事業の対象となり、国立公園の外に空港が整備されるとともにティカル遺跡までのアクセス道路が舗装された。現在ではグアテマラを代表する文化観光地となっている。

ティカル国立公園文化遺産保存研究センターの設立
 文化観光地として発展した反面、遺跡の保存や維持管理が行き届いておらず、近年には修復された建造物に保存上の問題点がみられるようになっていた。事態を憂慮したグアテマラ政府からの要請により、2005年度から国際交流基金の文化協力主催事業としてティカル国立公園文化遺産の現状診断調査と協力可能性調査が行われた。その結果を受けて、熱帯雨林という過酷な自然環境の中でも持続可能な形で、また長期的な視野に立って国際協力を進めるべく、2010年度に文化無償資金協力のスキームをつかって「ティカル国立公園文化遺産保存研究センター」の建設が両国間で合意された。

  • ティカル国立公園文化遺産保存研究センターの外観

  • 浸食・溶解が進む「北のアクロポリス」の建造物5D-22

  • カビやコケで覆われた「北のアクロポリス」のしっくい塗り石造マスク

活動内容

Activities

ティカル文化遺産保存研究センターを拠点とした金沢大学の取り組み

広域的な国際協力拠点としてのティカル文化遺産保存研究センター 
 ティカル文化遺産保存研究センターの設立は、外務省、国際交流基金、国際協力機構、日本の大学・研究機関などが一体となって、メキシコから中米の計5ヶ国にまたがって存在した古代マヤ文明の世界遺産登録遺跡の保存と活用を支援する広域協力計画の中心的事業である。この観点から、センターはマヤ文明の中心地であったグアテマラのティカルに建設されたが、ここを拠点として、その他の国のマヤ文明世界遺産の保存と活用の国際協力へと展開していくことが期待されている。

金沢大学の取り組み
 金沢大学は日本の研究教育機関の代表としてこの計画に参加するべく、2011年6月、グアテマラ文化スポーツ省文化自然遺産副省と交流協定を締結した。さらに同日、ティカル遺跡の調査・修復計画の立案から、総合的な保存研究、地域資源としての活用法の立案などを総合的に取り扱う遺跡マネジメント分野でのプロジェクトをティカルで行うべく、人間社会研究域と文化自然遺産副省との間で覚書を締結した。ティカル文化遺産保存研究センターが2012年7月に完成しグアテマラ側へ引き渡されると、ここを拠点として、金沢大学では「北のアクロポリス」の詳細測量を開始し遺跡マネジメントプロジェクトを開始した。今後は、2016年3月までを第一期として、未調査建造物の発掘調査や修復に加え、地区全体の総合的な保存対策の立案、地域資源としての遺跡の活用法を現地側と共同で研究していく。

  • 「北のアクロポリス」の測量調査

  • 1号神殿から見た「北のアクロポリス」

結果

Results

現地側の評価と今後の展望

現地側の評価
 ティカル国立公園に、最新の調査研究用基礎機材を整備したこのような恒久的な施設が建設されたのは初めてのことであり、グアテマラ大統領も開会式の際に日本の協力に対してたいへん感謝する旨のコメントを行っている。また、文化自然遺産副省からは、このセンターを使った共同研究や日本-グアテマラ双方の大学生や研究者の国際文化・学術交流、さらには研修等を通しての人材育成に大きな期待が寄せられている。

今後の課題と展望
 今後の課題としては、プロジェクトの拠点となるティカル文化遺産保存研究センターが長期的な視野で維持管理されるようにグアテマラ側に責任を持って運営してもらうこと、各国に存在するマヤ文明世界遺産の遺跡公園同士の間で進行している協力と連携の動きを支援しつつ、遺跡に関する総合的な研究分野としての遺跡マネジメントに関する人材育成に協力しその自立性を促進することがあげられる。さらに、金沢大学で行っているリーディング大学院プログラム「文化資源マネージャー養成プログラム」と関連させつつ、ティカル北のアクロポリスプロジェクトを発展させていきたい。

  • ティカル国立講演文化遺産保存研究センター開所式であいさつするグアテマラ大統領

  • ティカルでのプロジェクト実施に関する覚書書名(金沢大学提供)

地図

Map

Projects

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