大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト

事業名称
大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト
国名
エジプト・アラブ共和国
期間
2008年~2016年
対象名
大エジプト博物館収蔵品
文化遺産の分類
その他(考古遺物・美術品・文書)
実施組織
JICA
出資元
JICA
事業区分
人材育成

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背景

Background

エジプトの雇用を守るための協力を

日本の対エジプト援助方針
 エジプトはおびただしい数の遺跡や遺物が発掘されており、もはや説明が不要なほど世界によく知られた、悠久の歴史を現代に伝える国である。JICAは、日本の対エジプト援助重点分野の一つである「持続的成長と雇用創出の実現」のうちの「観光開発支援」プログラムにおいて支援を行っている。エジプトの観光セクターはGDPの4.3%(2009/2010)、雇用の12.6%(2008)を占める。また、2009年度の観光客数は1254万人、観光収入は約116億ドルであった。2011年のエジプト政変などの影響を受け、観光客数も観光収益も減少しているものの、観光業はエジプトの雇用を吸収するセクターとして依然として重要である。

大エジプト博物館の建設と文化財
 JICAは2006年5月15日に「大エジプト博物館建設事業」に係る借款契約を調印した。本プロジェクトは、エジプトの自国資金で建設された「保存修復センター(The Grand Egyptian Museum Conservation Center, 以下GEM-CC)」のスタッフに対し、同円借款事業に附帯するものとして、遺物の保存修復のための諸技術を指導するものである。そもそもエジプト観光の要となるエジプト考古学博物館(The Egyptian Museum,以下EM)は1902年に開館し、施設の老朽化や展示・収蔵スペースの不足といった課題を抱えていた。新たに建設する大エジプト博物館(以下GEM)はEMの一部の遺物を含め、合計約10万点もの遺物を展示品として収容する計画である。GEM-CCのスタッフはGEMに展示予定のこれら数多くの遺物を修復するとともに、適切な管理を行っていく必要がある。なお、GEM-CCには150名を超えるスタッフが配置されている。

  • 染織品研修:修復家向けグループワーク

活動内容

Activities

プロジェクトの活動、内容

開始の経緯
 JICAにとって文化財の保存修復そのものを取り扱う事業は初めてであったため、本格的な開始までに十分な準備期間を必要とした。本格協力につなぐための専門家を東京文化財研究所からの推薦に基づき派遣することから開始し、その後幾多のミッションをエジプトに派遣してきた。その間、実施が可能と判断された染織品、写真撮影などに係る初期的な研修を開催していたが、本格的な協力に向けた研修プログラムを策定するため、各分野の専門家11名から構成される調査団を2009年11月に派遣した。この調査の成果を受け、「保存修復人材育成プログラム」として取りまとめており、本プロジェクトの研修実施は同プログラムの計画に基づいて展開されている。

「保存修復人材育成プログラム」
 GEM-CCが取り扱う遺物の種類は木材、染織品、ガラス、ミイラなど多岐にわたる。また、単に保存修復のみならず、データベースの構築・活用や収蔵品管理、IPM、労働安全衛生対策、遺物の移送、マネジメント指導など多様な領域にも及んでいる。「保存修復人材育成プログラム」の包括的な計画内容に対応するため、東京文化財研究所からの講師人材推薦を受けながら、GEM-CCのエジプト人スタッフのニーズに応えるべく、講師、研修場所、資機材、計画内容を効率的に組み合わせた研修を実施している。2012年冬までに、21件の現地研修、11件の本邦研修を実施している。本邦の専門家による対応が難しい分野については、必要に応じ第三国人材を活用するなど、柔軟なプロジェクト運営をこころがけている。

  • 所内移動・梱包研修

結果

Results

自立発展に向けて

当初はエジプト・日本双方の専門家達が、互いに「何ができるのか?」手探りの状況が続いたが、エジプトに従来ある技術や考え方を尊重しつつ、GEM-CCの保存修復から科学分析、収蔵管理に至る広範囲の業務に適応した人材育成プログラムを2009年に作成した。その後「予防保存」、「保存修復」、「保存科学」分野における種々の研修や技術支援を通じて、日本側から国際標準の新しい理念や技術を伝達していく方式が定着してきた。一方で、支援の範囲が広がるにつれ、多岐に亘る人材育成の成果を業務に定着し推進していく上での組織運営的な課題が明らかになっている。
 今後は博物館本体の建設工事の進捗と共に、エジプト各地からGEMに収蔵される遺物が、大量に搬送されてくる予定であり、これらを適切に保存・管理し、展示へと繋げていくためには、GEM-CC各スタッフの知識や技術の向上と共に、培われた技術・経験が自立的かつ円滑にGEM-CCで運用され、外部へも発信・共有される組織や体制作りが喫緊の課題である。プロジェクトの目標である「GEM-CC が自立的に運営され、国際的に認められる水準の、総合的な保存修復・研究機関として機能するようになる。」を達成し、2015年にオープンが予定される博物館本体の土台が築けるよう弛まない技術支援を進めていきたい。

  • 保存修復材料としての和紙研修

  • 染織品研修:科学者向けグループワーク

地図

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Projects

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