世界文化遺産カスビ王墓再建プロジェクト

事業名称
世界文化遺産カスビ王墓再建プロジェクト
国名
ウガンダ共和国
期間
2013年~継続中
対象名
世界文化遺産カスビ王墓
文化遺産の分類
記念物、 遺跡
実施組織
ユネスコと日本の共同
出資元
ユネスコ日本信託基金
事業区分
保存修復

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背景

Background

再建プロジェクトの背景

世界文化遺産カスビ王墓は東アフリカ・ウガンダ共和国の首都カンパラの郊外に所在する。共和国内にはトロ王国、ブガンダ王国など伝統的な地方王国が存在している。「カスビのブガンダ王国歴代王の墓」は4代のブガンダ歴代王を祀る王墓で、2001年に世界文化遺産に登録された。しかし、2010年3月16日に放火によって王墓の主要建物Muzibu-Azaala-Mpanga が全焼した。
 この焼失の事態を受けて、ユネスコは同年に危機にさらされた世界遺産一覧表に記載し、その再建を図った。ユネスコ文化遺産保存日本信託基金は「ウガンダ・カスビ王墓再建事業形成ミッション」を派遣し、この成果に基づいてカスビ王墓の再建、危機遺産リストからの離脱及び効果的なリスク対策を目的にした再建プロジェクトに資金協力するとともに文化財修復の専門家派遣を行うことにした。
 歴代王を祀るカスビ王墓は、ブガンダ族の精神的な拠りどころとして厚く信仰されており、焼失したMuzibu-Azaala-Mpanga は直径約30m、高さ約15mの巨大な円形木造茅葺きの建物である。日本には茅葺きの木造建物が文化財として数多く保存されており、その保存技術には長い経験が蓄積されている。日本の文化財修理の専門家が木造茅葺き建物であるカスビ王墓再建の技術協力を行うのは最適といえる。
 なお、本来は木造であった王墓は1938年に英国によってコンクリート柱と鉄骨小屋組に変更されており、今回の再建に当たっては焼失前の構造で行うことになっている。
 本事業は実施期間2013年3月1日より2016年2月28日までの3年間、事業予算は650,000US$の予定で行われている。

  • 2010年3月16日放火により焼失

  • 火災後の状況

活動内容

Activities

日本の文化財保存専門家による技術協力

技術協力はユネスコと日本の共同で、Muzibu-Azaala-Mpanga 再建策に関する技術的検討ミッションとして、現在まで2 回実施された。日本側参加者は日塔和彦(東京藝術大学客員教授、文化財全般・茅葺き)、古川洋(武蔵野大学非常勤講師、建築構造)、菅澤茂(工学院大学客員研究員、防災設備)、長谷川順一(住まい空間研究所主宰、防災計画)の4 名がそれぞれの専門分野を担当した。
 ミッションでは、現地のサイトマネージャー、プロジェクトマネージャーの協力のもとウガンダ国立博物館、ユネスコ・ウガンダ国内委員会、ブガンダ王国との協議、現地視察や関係者からの聞き取り調査を実施した。また、関連する事例としてワマラ墓をはじめとする類例王墓の調査を行い王墓の理解を深めた。
 その他、建築構造関係では後世に補強されたコンクリート柱と鉄骨小屋組の構造、焼損状態を調査し、再建時の構造と施工に関する注意点を指摘して改善点の提言を行った。茅葺き関係では、地方の茅場の視察、ワマラ墓での茅葺き工事の調査、茅葺き職人への聞取り調査などを行い、ブガンダ独自の茅葺き技術や維持管理の技術の把握に努め、屋根を長持ちさせるための各種提言を行った。防災関係では木造茅葺き建物に適する防災機器を紹介し、これらの性能設計に関する指導を行った。また、カンパラ市消防本部と消防支所を視察し、消防体制を把握して改善の提言を行うとともに王墓の自衛消防組織の結成を促した。
 その他、日本側の提言として王墓復原模型の製作と事業技術報告書の刊行を促した。

  • 柱コンクリート工事

  • 軸部構造の立ち上がり

結果

Results

今後の課題

事業はまだ継続中であるが、今後の課題は多い。
 
 ❶コンクリート柱と鉄骨小屋組の施工精度が良好とは言い難く、一部手直しが必要となっている。地元建設会社の能力に問題がある。
 ❷茅葺きがこのプロジェクト最大の困難性を持っており、良質な茅材を大量にスムーズに供給できる目途がまだついていない。また、茅葺き職人の数も絶対的に不足している。これらが相まってかなりの工事の遅延が予想されたが、12 ヶ月の期間延長が認められたことから、どうにか期間内に終了できる目途がついた。
 ❸防災設備工事は木造茅葺きの建物に有効な設備が準備でき、良好な施工が可能か不安が残る。また、配管工事に伴う地盤の発掘調査も広範囲に行う必要があり、実施に困難性が伴う。
 ❹防災の体制については、設備機器の点検・運用・維持管理の実施が確実に行われる必要がある。また、防災訓練の定期的実施、自主消防組織の結成など懸案事項が多い。
 
 以上のように、今後は茅葺き工事や造作工事、防災設備工事、配管工事等に伴う発掘調査等技術的にも困難な仕事が多く残っている。また、工事の進行に伴う独特な宗教的行事もあって、予定通りの進捗は困難とみられたが、幸いに工期延長が認められた。今後の予定としては、茅葺き工事を2015年8月までに終了し、バーク・クロス張りなどの室内装飾を終えてオープニング・セレモニーを同年10月に行いたい意向である。

  • 茅場調査

  • 茅葺き工事の調査(ワマラ墓)

  • 化粧天井造りの調査(ワマラ墓)

地図

Map

Projects

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