文化遺産国際協力コンソーシアム Japan Consortium for International Cooperation in Cultural Heritage JCIC-Heritage logo JCIC-Heritage

カンボジアにおける遺跡保存と人材育成

Preservation of Monuments and Human Resource Development in Cambodia カンボジアにおける遺跡保存と人材育成

上智大学アンコール遺跡国際調査団

カンボジア王国

アンコール遺跡

1980年〜継続中 基礎研究,事業計画書,人材育成,保存修復
2009/03/01
NEXT

BACKGROUND背景

人間が夢を託したアンコール・ワット

 アンコール遺跡とは、アンコール期(802年頃~1431年頃)に、煉瓦・砂岩・ラテライト等で建設された、ヒンドゥー教や仏教の寺院とその祠堂、貯水池、橋梁などの膨大な数の建造物とその関連施設を指す。現在、カンボジア国内で約5010ヶ所が遺跡として登録されている。カンボジア北西部、シュムリアップ州のトンレサープ(湖)北西岸一帯に主として展開しており、有名なアンコール・ワットやアンコール・トムなど主要な63の遺跡が残る。1991年のパリ和平協定を経、1992年には世界遺産に登録された。上智大学を中心とするアンコール遺跡国際調査団は、1975年からのポルポト政府期を挟む所謂内戦期に、カンボジア人専門家が不慮の死を遂げ長く放置されていたこのアンコール遺跡群で、1980年からアンコール遺跡保護の活動、調査と研究、および人材育成を行ってきた。その方針は、学術性、多様性、継続性の3点に集約される。

                 2007年11月に修復工事が完了したアンコール・ワット西参道

ACTIVITIES活動内容

発掘・保存修復を通した文化協力

 私たち上智大学調査団(アンコール遺跡国際調査団)には、早稲田大学(政経学部)・東北工業大学・弁護士・石工棟梁・東京大学・金沢大学・山形大学・日本大学・京都府立大学・奈良女子大学・奈良文化財研究所・大阪市文化財協会・日本品質保証機構などをはじめ各分野の専門家・研究者が参加し、次のような方針を掲げて活動している。
 
 第1:カンボジア人による、カンボジア人のための、カンボジアの遺跡保存修復

 第2:文化財の調査・研究と保存修復事業の密なる連動
 第3:綿密な遺跡調査に基づいた中期および長期的なマスタープランに基づいた保存修復

である。
 その活動内容は大きく、

 (1)遺跡の調査研究と保存修復
 (2)カンボジア人の専門家の養成
 (3)遺跡エンジニアリング方法論による「遺跡・村落・森林」の共生

の3プロジェクトに分けられる。

 活動実施における留意点は、

 ・「遺跡を地域から切り離さない」
 ・「カンボジア文化の文脈で考えずに技術的観点に終始しない」
 ・「現地の技術レベルや技術の消化能力などを見ながら、技術の導入・引渡を行う」

という3点が挙げられる。

                 アプサラ機構と共催した遺跡周辺住民に対するシハヌーク・イオン博物館見学会

RESULTS結果

20年目へむけた人材養成プロジェクト

 カンボジアが内戦中の1980年以降、本調査団は、政治的立場やイデオロギーを超えて、アンコール遺跡保存修復活動を実施してきた。カンボジアの要請を受け、1991年から開始された人材養成プロジェクトは、既に17年をむかえ(2008年現在)国内外から高い評価をいただいている。人材養成内容も、プノンペンの王立芸術大学における集中講義から重点的な現場実習、ワークショップ、自前発掘のみならず、芸術大学卒業生を「研修生」として数名雇用し、より実践的な調査研究活動の習得を目指した。また、上智大学においてカンボジア人学生を受け入れ博士号取得をなしたカンボジア人は既に5名を超える。2006年度、および2007年度にはACCU専門家交流プログラム事業の委託を受け、カンボジア人専門家10名を日本に招聘し、日本国内の世界遺産を訪問する研修を企画した。人材養成は専門家にとどまらず、我々の学術調査研究の成果を、研修生を通して遺跡周辺の村落住民に対して還元する試みの一種として行われている。
 2001年には、10年間にわたり続けられてきたバンテアイ・クデイ遺跡での考古発掘調査により、アンコール王朝の歴史を塗り替える274体の仏像が発見され、アンコール王朝の解明に大きな貢献を果たした。発掘された仏像群は、2007年11月に完成したシハヌーク・イオン博物館において一般に公開されている。
 また、1997年からアプサラ機構と共同して始められたアンコール・ワット西参道修復事業は、2007年11月に第一工区(西参道全240mのうちの100m)が完了した。
 この他、継続中の活動として:①カンボジアの人と楽しむ文化遺産プロジェクト:村人を対象とした現場見学会(バンテアイ・クデイ発掘現場からシハヌーク・イオン博物館、そして西参道修復現場)2008年2月、8月にアプサラ機構と共同で開催、②バンテアイ・クデイ定例清掃プロジェクト:毎週金曜日にロ・ハール村の村人10名による(1999年開始、2007年7月に500回を記念)などがある。

                 274体の仏像が出土したバンテアイ・クデイ寺院において研修を受けるプノンペンの王立芸術大学の学生

MAP地図