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アフガニスタン文化財復興支援事業

The projects to assist the conservation of cultural heritage in Afghanistan アフガニスタン文化財復興支援事業

東京文化財研究所

アフガニスタン・イスラム共和国

バーミヤーン遺跡

2004年〜2008年 意識啓蒙・普及活動,機材供与,マスタープラン作成,基礎研究,保存修復,人材育成,事業計画書
2007/04/01
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BACKGROUND背景

バーミヤーン渓谷の遺跡群

 バーミヤーン遺跡は、アフガニスタンの首都カブールから北西に120キロ、標高2,500メートルほどのヒンドゥー・クシュ山脈にある仏教時代からイスラーム時代の遺跡群です。バーミヤーンは中央アジアの砂漠のオアシスとして古くから知られていました。
 バーミヤーン渓谷には数多くの遺跡があります。なかでも、バーミヤーン大崖に掘り込まれた数百の石窟寺院からなるバーミヤーン遺跡、フォーラーディー遺跡、カクラク遺跡が知られています。バーミヤーン遺跡には仏教遺跡として東西大仏像、坐仏像や僧院があり、これらの石窟の内部は、壮麗な壁画で飾られていました。この遺跡群は、仏教伝播の西端の地として文明交流の証を数多く残している重要な文化遺産です。
 その他にも、アフガニスタンは、古代から東西文明交易路の要衝の地であり、アレクサンドロス大王、玄奘三蔵、チンギス・ハーンなどに由来する、様々な文化遺産が残されています。

バーミヤーン遺跡に訪れた危機

 アフガニスタンは、旧ソビエト連邦の侵攻以来、20年以上にわたる内戦に苦しみました。その期間には、バーミヤーンの遺跡群の数多くの文化遺産が破壊、盗難されました。2001年3月には、世界中からの反対の声を無視し、ターリバーン政権による東西大仏の爆破事件が起こりました。
 その後、ユネスコを中心とする調査が行われ、東西大仏だけではなく、バーミヤーン遺跡全体が甚大な人的被害を受けていることが明らかになりました。そこで、その国際的な保護にあたるために、2003年7月に「世界遺産リスト」に登録し、「危機にさらされている世界遺産」として本格的な保存事業、復興事業が開始されることになりました。

仏典保存ワークショップ

地下探査

ACTIVITIES活動内容

バーミヤーン遺跡群復興事業の始まり

 バーミヤーン遺跡保存事業は、日本政府がユネスコに拠出したユネスコ文化遺産保存日本信託基金によって開始されました。アフガニスタン情報文化省とユネスコの協力の下、日本、イタリア、ドイツ、フランスの専門家とイコモスが連携して事業を実施しています。日本の東京文化財研究所および奈良文化財研究所は、「壁画の保存」と遺跡の保存・管理のための「予備的マスタープランの作成」を担当しています。内戦時あるいはターリバーン政権下に破壊された壁画の保存修復、状態記録、石窟内に散乱していた1万点以上の壁画片のデータベース化と、保管管理などの活動を通じて、アフガニスタンの保存修復専門家の人材育成にもあたっています。日本とフランスは、観光資源としてのバーミヤーン遺跡の活用を目指して、遺跡分布の把握や周辺地域の保護・整備のために、考古学的な調査もあわせて実施しています。一連の調査を通じて、これまで知られていなかった壁画のある石窟や、仏塔、伽藍の発見など、バーミヤーン遺跡の価値を再評価することとなる、歴史的にも重要な発見が続いています。日本は、東京・奈良文化財研究所を中心とする考古学、美術史、絵画保存修復、保存科学、環境工学、建築史の専門家とフランスおよびイタリアの保存修復専門家とが協力して作業を実施しています。

各国の取り組み

 イタリアは、過酷な自然環境やダイナマイトによる爆破の影響のために脆弱化してしまっているバーミヤーン主崖の補強を実施しています。また、ドイツとイコモスは、爆破された東西大仏の破片の保存を行っています。ドイツは、周辺の地域開発のための計画作りや歴史的建造物のデータベース化などを実施しています。このようにバーミヤーン遺跡の保存では、各国が国際的に協力しながら事業を進行しています。

遺跡分布確認調査

考古測量研修風景

RESULTS結果

壁画の保存修復への取り組み

 東京文化財研究所と奈良文化財研究所は、2007年2月までに、計7回のミッションを派遣して保存修復事業を実施しました。いままでの作業の中で、剥がれ落ちる危険のあったI窟の壁画の補強作業を完了することができました。またN(a)窟では、壁画の表面に見られる後世の壁土や黒色付着物の洗浄作業を行い、その過程で新たな図像を発見するなど、今後の活動に向けて重要な足がかりとなる成果が得られました。I窟とN(a)窟のパイロット・プロジェクトは、これらバーミヤーン仏教壁画の保存に特有の問題に取り組むものであり、将来的な壁画の保存にとって有意義な第一歩となるといえます。保存修復にともなう壁画試料の科学的な分析から、バーミヤーン壁画に使用された様々な彩色技法や材料についても明らかになりつつあり、シルクロードを通じた彩色材料や技法の東西文化交流を考える上で、極めて重要な成果が得られています。壁画の劣化要因や保存状態を把握するための環境計測についても、継続して実施しています。

包括的なバーミヤーン遺跡群の保存と復興に向けて

 バーミヤーン遺跡の考古学的調査では、保護が必要とされる考古遺跡を特定し管理するために、周辺地区で踏査および確認調査を行っています。2005年春にはバーミヤーン遺跡から4kmほど西に位置するコリ・ジャラール遺跡において、極彩色を残した壁画のある石窟を新たに発見しました。また、2007年秋にはジュー‐イ・シャフル地区において、石灰岩の切石を並べて構築したストゥーパ基壇縁が確認されました。
 バーミヤーン遺跡の建造物調査では、バーミヤーン谷の仏教石窟群を対象として、文化遺産保存の前提となる安全性評価に必要な石窟の現状記録調査や保存状況把握のための調査、および建築史的調査を行っています。石窟構造や保存状況の記録から、崖面の亀裂と関わる破損状況の特徴や問題点、窟ごとの上下関係に着目した新たな石窟のグルーピングの可能性が明らかになりました。
バーミヤーン遺跡を包括的に保存していこうという本事業において、現地において様々なワークショップや、アフガニスタン人専門家との共同作業を実施しています。近い将来に、アフガニスタンの人たちの手で、かけがえのないバーミヤーンの文化遺産を保護していけるように、国際貢献としての保存事業を今後も継続していきます。

                 発見されたコレ・ジャラール仏教壁画

MAP地図