ドンラム農村集落保存プロジェクト

事業名称
ドンラム農村集落保存プロジェクト
国名
ベトナム社会主義共和国
期間
2003年~2005年
対象名
ドンラム村
文化遺産の分類
記念物、 建造物群、 文化的景観、 無形遺産
実施組織
昭和女子大学国際文化研究所、奈良文化研究所、文化庁
出資元
文化庁、科研費
事業区分
意識啓蒙・普及活動、 基礎研究、 人材育成、 事業計画書、 マスタープラン作成

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背景

Background

対中独立の英雄を輩出した伝統的農村ドンラム(唐霖)村

 ドンラム村は、対中国からの独立の英雄フンフン(馮興)ゴクエン(呉権)、対中外交の英雄ザンバンミン(江文明)の出身地として知られる村です。特にモンフー集落には、江・阮・藩・河氏などの一族の祀堂があり祭祀が行われ、小高い丘にラテライト塀に囲まれた古民家群が美しい集落です。急激な工場開発と生活近代化に見舞われた農業国ベトナムは、国の基盤であった農村の精神を後世に伝えたいと文化財保護法を改正し、改正保護法適用第1号としてドンラム村の農村集落保存に乗り出しました。しかし、建物群としての保存に経験の浅いベトナムは、ホイアンの町並み保存に実績のあった日本に協力を要請、保存事業に着手しました。

  • ドンラム門

  • 村の風景

活動内容

Activities

押し迫る現代的な生活様式への急激な変化との戦い

 ベトナム政府からの要請に文化庁文化財部が協力を決め、2003年3月文化情報省と文化庁の間で協力協定を締結しました。こうして、文化庁の依頼を受けた昭和女子大学国際文化研究所と奈良文化研究所が研究助成金等を得て、まずは保存対策調査を実施しました。日本との協業経験のあるベトナム側は、建築においてはベトナム建設省建築研究所、生活、文献、歴史等においては、ハノイ国立大学が共同調査を行いました。しかしながら、調査をはじめた2003年当時ですら、ベトナムは既に飛躍的な経済発展が進行しており、子供の教育熱とともに個室要求が高まった結果、都市部のみならず農村部でも二階建、三階建、それ以上の階数をもつレンガ造の住宅が建設され、伝統的な景観は失われつつありました。このことから、プロジェクトは押し迫る現代的な生活様式への急激な変化との戦いになりました。2004年12月には中間報告を行いました。

  • 開春礼

  • 入夏礼

結果

Results

ベトナムの心を後世に伝える

 保存修復活動の結果、ドンラム村は、2005年11月新文化財保護法適用第1号に指定され、2006年5月に保存条例施行開始、同年7月にはドンラム村遺跡管理事務所も発足しました。また、2007年3月ユネスコ・イクロム等を招き世界遺産に向けて国際機関からの助言も受けました。さらには、保存地区内の具体的な建物群の修理に関する日本からの建築修復技術の移転のため、ユネスコアジア文化センター(ACCU)の協力を得て、地元の技術者を日本で研修すると同時に、国際基金の協力を得て、日本の文化財建造物修理の技術者が現地で修理の指導にあたりました。さらには、被服・食物などの無形文化財保存への協力が進み、2008年1月からJICA青年海外協力隊2名(建築・村落)が常駐して、積極的な活動をおこなっています。これらの保存活動により観光客が増加し、さらに住民の保存への意識が高まり、保存が進むという好循環が期待されています。そして、2009年2月には、文化庁・奈良文化財研究所・昭和女子大学・JICA・国際交流基金・ユネスコアジア文化センターは、ドゥオンラム村保存への貢献に対して、ベトナム文化観光スポーツ省大臣から大臣表彰を受けました。ベトナム文化観光スポーツ省では、このプロジェクトでの経験をもとに中部フエ郊外フクティック(福積)村の保存を開始し、さらにベトナム各地に心の故郷=農村を保存し後世に伝えようとしています。今後、ベトナムの他地域における農村集落保存に対しても、引き続き協力してゆく予定です。

  • ベトナム文化観光スポーツ省大臣表彰

  • ベトナム文化観光スポーツ省大臣表彰

地図

Map

Projects

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