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フィリピン共和国における協力相手国調査

Survey on the Protection of Cultural Heritage in the Republic of the Philippines フィリピン共和国における協力相手国調査

文化遺産国際協力コンソーシアム

フィリピン共和国

フィリピンの文化遺産

2013年 基礎研究
2015/03/01
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BACKGROUND背景

多様な文化遺産と自然災害

 フィリピンは大小7,100ほどの島からなる東南アジアの島嶼国で、マレー系人を主体とした多民族国家である。その多様性は文化遺産にも表れており、先史時代の考古遺跡、文化的景観としての棚田、植民地時代の町並みや教会群など、多くの文化遺産を有する。一方で、現在の多民族国家の成立前に植民地支配や戦争の被害を受けており、独立後の国家の発展に際しては、日本を含む多数の国際協力を得てきた。
 日本が行ってきたフィリピンの文化遺産への協力については、政府による文化無償援助協力、あるいは、専門家による建築学、文化人類学、考古学などの分野ごとでの研究が中心であった。しかしながら、文化遺産の状況が明らかになるような、分野横断的な調査は行われてこなかった。実際日本が積極的に文化遺産の支援を行ってきた近隣の東南アジア諸国と比較した場合、フィリピンの文化遺産に対しての支援は限られ、またフィリピンの文化遺産保護に関する情報も乏しい。さらに、現地の治安によっては、文化遺産の状況の把握の度合いに差がでている。一例を挙げると、過去ではルソン島北部、現状ではミンダナオ島の文化遺産保護状況について情報が限られている。
 また、フィリピンは日本と同様に自然災害が多発する地域である。2013年には、地震によりセブ島・ボホール島が、台風「ハイヤン」によりビサヤ諸島が甚大な被害を受けた。同地域の文化遺産も多数の被害を受けており、文化遺産に対する危機管理が必要となっている。

フィリピン調査対象地域(破線で表示)

カラオ洞穴

ACTIVITIES活動内容

調査団派遣と関係機関との連携体制

 2013年は日・ASEAN 友好協力40周年であり両国の関係強化が期待されていたため、フィリピンにおける文化遺産保護の現況と今後の国際協力に向けた展開を探ることを目的に、文化遺産国際協力コンソーシアム(以下コンソーシアムという)の協力相手国調査として現地調査団の派遣を決定した。調査は2013年2月に実施し、フィリピン側の協力要望事項等を明らかにすることに主眼を置きつつ、代表的文化遺産であるルソン島北西部の考古遺跡、ヴィガンの歴史都市、セブ島及びボホール島の教会群や植民地建造物、各地の博物館や図書館などを訪問し、担当者と面談しながら、情報収集や意見交換を行った。
 この他、在フィリピン日本国大使館、及びJICAフィリピン事務所との面談を行い、国際機関の動向および日本側の機関の展望の聞き取りも行うことで、支援体制についての情報も収集した。調査時のフィリピン国内の窓口は、国家文化芸術委員会国際部が担当した。
 調査団には、日本及び東南アジアの建築史が専門のコンソーシアム東南アジア分科会(調査時)会長の上野邦一氏に加え、フィリピンで調査研究の経験が豊富な上智大学の田中和彦氏(フィリピン考古学)、滋賀県立大学のヒメネス・ベルデホ・ホアン・ラモン氏(スペイン植民地時代都市史)が参加した。

国立博物館外観

国家文化芸術委員会との面談

RESULTS結果

迅速な支援体制の構築と支援の実施

フィリピンの文化遺産の状況
 調査の結果、フィリピンの文化遺産の現状もその価値も総じてまだ十分に調査がされておらず、フィリピン国内外において同国の文化遺産保護の研究を行っている専門家が不足していることがわかった。フィリピン国内では文化遺産保護に対する教育部門が立ち遅れており、人材育成が急務であることが明らかである。そういった教育部門の強化や人々の文化遺産に対する認識の向上により、保護が進む文化遺産が増えることが予想される。また、保護の枠組みとしては、地方行政との連携が文化遺産の保護の鍵となっており、執行は地方の政治状況に依存していることも明らかになった。

フィリピン側の要望
 フィリピンからは、文化遺産への認識の向上への協力に対する要望がある他、フィリピンがアジア地域間で連携基盤を築き、地域全体での学術協力及び人材育成を行うことに対する日本による貢献を期待する声が聞かれた。日本がアジア諸国において蓄積してきた協力実績を活かし、他アジア諸国との連携を視野に入れつつ支援を行うことが、フィリピンの文化遺産保護を検討する上で必要である。

コンソーシアムによる支援体制づくり
 コンソーシアムでは、東南アジア・南アジア分科会等の場も利用しつつ、今後の日本からの協力のあり方について広く関係諸機関と協議を重ね、オールジャパン体制でフィリピンの文化遺産保護支援を行える枠組み作りを進めてきた。この結果、2013年10月には国際交流基金の助成による「肥前磁器(有田焼)の産地・年代同定作業を中心とした陶磁器考古資料に関する技術支援(申請者:田中)」事業を支援した。事業では、フィリピンより考古学者を一名招聘した。
 また、地震による被害を受ける前の文化遺産の状況を日本国内の専門家と共有した結果、2014年8月には同基金の助成による「セブ島及びボホール島の文化遺産の修復のための日本フィリピン共同カンファレンス(Japanese-Philippine Conference for Restoration and Conservation of Cebu and Bohol island's Cultural Heritage)(申請者:ラモン)」の事業支援につながった。事業では、日本から本調査参加者以外にも多数の研究者が参加し、セブ島のサン・カルロス大学と共同で文化遺産の危機管理に関するワークショップを開催した。
 日本国内では、田中が中心となりアジア太平洋文化遺産研究会の設立準備を進めており、調査の結果を受けた迅速な支援体制の構築と支援の実施が行われつつある。コンソーシアムでは今後もこのような国内での支援事業への協力及び情報収集・発信を通じて、効果的な文化遺産国際協力を進めていきたい。

肥前磁器(有田焼)の産地・年代同定作業

日本フィリピン共同カンファレンスでのボホール島被災地訪問

MAP地図