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ブータン王国の歴史的建造物保存活用に関する拠点交流事業

ブータン王国の歴史的建造物保存活用に関する拠点交流事業

東京文化財研究所+ブータン内務文化省文化局

ブータン王国

伝統的民家、歴史的集落、文化的景観

2019年4月~2022年3月 人材育成,保存修復,意識啓蒙・普及活動
2022/08/09
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BACKGROUND背景

ブータンにおける建築遺産保護の今とこれから

 ブータンはヒマラヤ山脈下の厳しくも豊かな自然環境に培われた独特な文化的伝統を有する国であり、国策の柱に位置づける国民総幸福量(GNH)の観点から、伝統文化の保護と継承に力を注いでいる国としても知られる。しかし、文化遺産としての歴史的建造物の保護に関しては、伝統的な建築行為が日常の一部として息づいていることもあり、仏教建築や宮殿建築を除いては制度的な枠組みが設けられていなかった。
 2009年と2011年に相次いで発生した地震により多くの建造物が被災し、歴史的建造物の構造的安全性における欠点が露呈したことで、その大多数を占める伝統的な民家建築の保存が文化遺産保護における喫緊の課題として浮上することになった。以来、文化遺産保護を所管するブータン内務文化省文化局(DoC)では、新しい文化遺産基本法の制定を視野に入れて、歴史的建造物全般の保存の実践に向けた様々な検討を進めている。

ブータンの西部地域でみられる版築造の伝統的民家

2011年の地震で生じた版築壁の変形と亀裂

ACTIVITIES活動内容

伝統的民家の保護の実現に向けた取り組み

 東京文化財研究所(東文研)ではDoCの要請を受けて、震災直後の2012年度から様々な支援の枠組みを用いて、ブータンの歴史的建造物の復旧や耐震対策に対する協力を行ってきた。また、歴史的建造物の保護対象の拡大を目指すDoCの方針を支援し、2019年度から2021年度にかけて文化庁から文化遺産国際協力拠点交流事業を受託し、同国の伝統的民家の保存活用に関する技術的協力及び人材育成活動を行った。
 技術的協力としては、DoC遺産保存課(DCHS)と共同で同国西部地域において試験的な集落調査を実施し、文化遺産として保護すべき伝統的民家を選別する効果的な手法の検討を行った。また、2019年以前の協力事業で見いだされた顕著な文化的・歴史的価値を有すると考えられる3件の伝統的な版築造の民家(ラム・ペルゾム邸、タンディン・ザム邸、プブ・ラム邸)を対象に、所有者等の意見や要望を踏まえつつ、それぞれの状況に応じた具体的な修理方法や活用計画等の提案を行った。
 人材育成活動に関しては、DCHSの建築担当職員を招聘し、日本の伝統的民家の保存修理や再利用事例の現地研修を行うとともに、修理や改修に関わる技術者や行政担当者、所有者等関係者との意見交換を行った。

伝統的民家の修理方法検討の共同調査(ラム・ペルゾム邸)

伝統的民家の再利用事例の現地研修(丹波篠山市)

RESULTS結果

文化遺産としての伝統的民家の普及啓発

 新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延に伴う渡航制限により、2020年度と2021年度は予定していた技術的協力及び人材育成活動を中止せざるを得なくなり、代替措置として、文化遺産保護行政実務に資する伝統的民家建築の参考書の作成及び伝統的民家建築の文化遺産としての意義を啓発する社会教育教材の作成を行うとともに、伝統的民家の保存活用をテーマとしたDCHS職員向けのオンライン研修を行った。
 このうち行政担当者向けの民家建築参考書については、主に2016年から2018年の3年間に協力事業として実施したブータン西部での民家建築調査の成果をもとに作成し、DoCがブータン国内の文化遺産保護関係機関等に対して配布と説明を行った。社会教育教材は、文化遺産としての民家建築の理解をブータン社会一般に効率的に広げていくことを目的として、学校教材の利用を前提に絵本の体裁とし、教育言語である英語版のほか公用語であるゾンカ語版を作成してブータン国内で印刷製本を行った。今後、教材として使用するための関係機関との調整がつき次第、ブータン国内の中学校全校への配布を行う予定となっている。

行政向けの民家建築参考書「Vernacular Houses in Bhutan」

学校教材「Understanding Our Heritage: Pema Visits A Rammed Earth House」

MAP地図