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ユネスコ文化遺産保存日本信託基金 シルクロード世界遺産登録に向けた支援事業[フェーズI]

UNESCO/Japanese Funds-in-Trust Project Support for Documentation Standards and Procedures of the Silk Roads World Heritage Serial and Transnational Nomination in Central Asia[phase I] ユネスコ文化遺産保存日本信託基金 シルクロード世界遺産登録に向けた支援事業[フェーズI]

東京文化財研究所

カザフスタン共和国、キルギス共和国、タジキスタン共和国、トルクメニスタン、ウズベキスタン共和国

【カザフスタン】 ボラルダイ古墳群、サウラン遺跡、 【キルギス】 アク・ベシム遺跡、ケンブルン遺跡、 【タジキスタン】 フルブック遺跡、 【ウズベキスタン】 カンカ遺跡、【トルクメニスタン】 メルブ遺跡

2011年〜2014年 機材供与,人材育成,資金提供
2015/03/01
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BACKGROUND背景

シルクロードの世界遺産登録を支援する

シルクロードと中央アジア5ヶ国
 ユーラシア東西をつなぐシルクロードは、東洋と西洋の文化的、社会的、政治的統合や交流を促す「道」として、古代から現代まで脈々と生き続けている。中でも、シルクロードの主要ルート群が集中する中央アジア5ヶ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)には、シルクロードを通じヒト、モノ、情報が伝播し、集積した歴史的過程を具体的に示す文化遺産が数多く遺されている。それには、東西交易を維持管理した都市遺跡や防御施設、隊商や旅行者の宿泊施設(隊商宿など)、錫やラピスラズリなど中央アジアに固有な資源の採掘址やそれを加工した工房址、仏教、イスラム教、ゾロアスター教、ネストリウス派キリスト教など宗教の東西伝播を示す宗教施設、山地部を通過するための峠道などの自然地形、乾燥地での居住を維持するための水管理システムや農牧地の文化的景観など、極めて多様な遺産が含まれる。

世界遺産登録に向けた課題
 このように多様で固有な文化遺産を数多く有する中央アジア5ヶ国だが、世界遺産への登録件数は、他地域と比較しても芳しくない。その背景には、5ヶ国の経済状況も無論考慮に入れる必要があるが、その一方で世界遺産登録を行うために必要なノウハウとそれを担う人材が総じて不足していることも主な要因として指摘できる。具体的には、考古学的遺構や建造物など対象となる文化遺産を正確に記録するドキュメンテーション技術、作成した記録を体系的に管理・利用するアーカイブ技術、文化遺産を持続的に維持継承するための保存修復技術、文化遺産の歴史的意義を科学的に説明・解釈し、遺跡公園などの形でプレゼンテーションする技術などである。

ボラルダイ古墳群(カザフスタン)での地下レーダ探査実習

ボラルダイ古墳群での地下レーダ探査解析結果

ACTIVITIES活動内容

中央アジア5ヶ国でのワークショップ

ワークショップの開催経緯
 先に挙げた課題はシルクロード世界遺産登録においても一つの障害となった。中央アジア5ヶ国に中国を加えた6ヶ国によるシルクロード世界遺産登録の共同申請に向けた取り組みは、2003年以来続けられてきたが、各国間で申請に向けた進捗状況に大きな隔たりが出てきたのである。複数国での共同申請を行うシルクロード世界遺産登録において、この隔たりは確実に埋めていく必要がある。そこで、日本政府は2009年5月にカザフスタンのアルマトイで開催されたユネスコ会議の席上、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金によりシルクロードの世界遺産登録を支援することを正式に表明し、中央アジア5ヶ国を対象として、文化遺産ドキュメンテーションに関わる人材育成と技術移転を図るためのワークショップを2011年から2014年にかけて開催する運びとなった。

5ヶ国でのワークショップ
  ワークショップでは、各国の文化遺産ドキュメンテーション技術の現状を踏まえ、各国の実情に即したプログラムが組まれた。例えば、すでに技術が一定水準に達しているカザフスタンでは、考古遺跡の地下探査に関する人材育成と技術移転を目的としたワークショップを開催した。また、技術基盤が脆弱な他の4ヶ国では、考古遺跡や歴史的建造物の測量とデジタル図化作業を中心とした基礎的なトレーニングを行った。ドキュメンテーションに必須なトータルステーション等の機材も各国に供与し、各国共通の機材基盤づくりも図った。
 さらに、5ヶ国が文化遺産分野での国際的関係を構築できるように、我が国の複数の研究機関のみならず、海外の研究機関にも協力を仰いだ。具体的には、国別に担当を分け、カザフスタン、キルギス、タジキスタンでは東京文化財研究所と奈良文化財研究所、トルクメニスタンではロンドン大学、ウズベキスタンでは東京文化財研究所と同志社大学がそれぞれ中心となってワークショップを開催した。

アシガバード(トルクメニスタン)で開催された第2回シルクロード世界遺産登録調整会議

アク・ベシム都城址での考古遺構測量実習

タジキスタンでのCAD実習

RESULTS結果

世界遺産シルクロードとその将来

シルクロードの世界遺産登録
 2014年、カタールのドーハで開催された第38回世界遺産委員会で、カザフスタン、キルギス、中国が共同申請した「シルクロード:長安=天山回廊の道路網」の世界遺産登録が決定した。世界遺産への登録支援を第一の目標とした私たちの取り組みは一定の成果を上げたと評価できる。一方で、タジキスタン、ウズベキスタンが共同申請した「シルクロード:ペンジケント=サマルカンド=ポイケント回廊」は登録延期、トルクメニスタンの遺産は申請に至らなかった。今後は、未登録国の世界遺産登録実現に向けた支援を継続すると同時に、登録国においても文化遺産の持続的な維持管理や観光開発との連携を目的として、5ヶ国での文化遺産の調査研究、保存、活用の基盤向上やアーカイブ資料の共有化を目指した支援を続けることが決定している(フェーズII:2014年~2017年)。

シルクロード、そして日本
 これまで、そしてこれからの中央アジア5ヶ国におけるシルクロード世界遺産登録を支援する私たちの試みは、翻って、我が国の歴史を振り返り、将来を模索する営みともなりうる。シルクロードの東の終着点に位置する我が国もまたシルクロードを通じた東西文化交流の歴史的一員だからである。その一員として、中央アジア5ヶ国及び中国によるシルクロード世界遺産登録にささやかながらも貢献することは、我が国にとって誇りでもあり、あるいは責務でもあるのかもしれない。のみならず、国際協力を通じた世界遺産シルクロードの再生は、我が国とアジア諸国及びヨーロッパ諸国との文化を通じた対話と協調を再構築する道ともなるはずである。

ウズベキスタンでの写真測量実習

フェーズIIのアクションプランレター

MAP地図