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新石器時代集落ギョイテペの研究と保存公開

Study and conservation of the Neolithic settlement of Goytepe 新石器時代集落ギョイテペの研究と保存公開

東京大学

アゼルバイジャン共和国

ギョイテペ遺跡

2008年〜継続中 人材育成,基礎研究
2013/03/01
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BACKGROUND背景

農耕牧畜経済の拡散を北方に追う

調査の目的
 西アジアで1万年ほど前に生まれた世界最古の農耕牧畜経済は、どのようにして周辺地域に拡散したのだろうか。西のヨーロッパや東のイラン、パキスタン方面への拡散に比べ、解明が遅れているのが北方への拡散である。アナトリア、コーカサス山脈といった高山地帯を初期農耕牧畜社会がどう乗り越えたのか、また在地狩猟採集民と接した際、どう対応したのか。新石器経済の拡散研究は考古学、人類学的にきわめて興味深い課題を提起する。これを調べるために、2008年からアゼルバイジャン共和国において野外調査を開始した。

アゼルバイジャンの考古学・文化財保護事情
 アゼルバイジャン共和国は1991年に独立宣言した後、旧ソビエトにおける高等教育の機会を一気に減じた。加えて隣国との紛争が続いたため国内における高等教育にも中断が生じた。こうした政情不安が、上述した新石器時代調査をふくむ考古学研究、さらには、文化財を扱う専門家育成に深刻な停滞を招いている。今般のプロジェクトは純粋な学術目的で開始したものであるが、政情が安定した今、現地当局から、文化財事業の発展、専門家育成のための協力を求められたため、喜んで応じることにした。

ギョイテペ遺跡の発掘風景

ギョイテペ遺跡をめぐる協力関係模式図

ACTIVITIES活動内容

南コーカサス最古級の農耕牧畜村落—ギョイテペ

調査の経緯
 農耕牧畜社会の起源についての本格的調査は1970年代を最後にアゼルバイジャンでは途絶えていた。それに風穴をあけるべく、2008年に現地の若手考古学者、F.キリエフ博士が当地最古と目されるギョイテペ遺跡の発掘を開始した。これへの協力の打診が共通の知人であるフランス人研究者を通じて西秋に届いた。自らの関心にも合致していたため、西秋は参画を決めた。2008年に予備調査を実施し、2009年以降、本格発掘を続けている。2010年には遺跡保存公開の計画がもちあがり、キリエフが所属する考古学民族学研究所と東京大学総合研究博物館が協力覚え書きを交わした。現地当局は大形予算の措置を決定し、保存公開プロジェクトが本格始動した。

遺跡研究と保存公開
 西秋のグループは資金やヒトを持ち出して保存公開を主催する立場にはない。最も得意なのは学術的貢献である。そもそも、保存公開行政は現地当局が責任をもっておこなうべきものと考える。日本側は最大限の責任をもって遺跡の学術的研究や専門家育成に協力する。それをふまえて、遺跡活用のための段取り、行政施策は現地当局が責任をもっておこなう、というのが現実的である。両者は排他的な関係ではないが、役割分担を明確にしつつ事業は進んでいる。2011年にはアゼルバイジャン側が企画したCIS諸国の若手考古学者研修にも参加し、教育プログラムの一端を担った。

CIS研修の発掘

ギョイテペ遺跡の新石器時代建築

ギョイテペ遺跡発掘チーム

RESULTS結果

コーカサス地方における農耕牧畜経済の出現

調査の成果
 ギョイテペ遺跡の調査によって、南コーカサス地方には遅くとも紀元前6千年紀初めには農耕牧畜経済が出現していたことがわかった。当時の社会は泥壁建築が密集する村落で営まれており、複数種の穀物、家畜を利用した生業を営んでいたことも判明した。ただし、現時点では発掘が最下層まで到達していないため、さらに古い農耕牧畜村落が存在するのかどうか、あるとしたらその経済の性質や起源、などについての解明は今後の調査を待たねばならない。

ギョイテペの遺跡公園化に向けて
 この遺跡は、アゼルバイジャンにおける最大、最古級の新石器時代村落であると同時に、独立後に本格的調査がおこなわれた初めての先史時代遺跡でもある。日本で言えば、登呂遺跡に匹敵する。これをふまえ、公園化事業を推進している。遺跡を屋根(ドーム)で保護し、かつ隣地に博物館を併設する計画である。これによって、遺跡調査をリアルタイムで見学できるようにし、国際レベルの研究成果を発信できるようにしたい。これまでに、幹線道路から遺跡への道路がつけられたほか、遺跡を囲む塀、仮の入口などが建設されている。公園化の実現に向けてもうしばらく協力を続ける所存である。

ギョイテペ遺跡講演の入り口道路

ギョイテペ遺跡講演の仮の門

MAP地図