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ミャンマーにおける文化遺産保護状況調査

Investigation of actual conditions regarding cultural heritage protection in the Republic of the Union of Myanmar ミャンマーにおける文化遺産保護状況調査

文化遺産国際協力コンソーシアム

ミャンマー連邦共和国

ミャンマーの文化遺産

2012年 基礎研究
2013/03/01
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BACKGROUND背景

東南アジアの秘境の開放―民政移管の動きと文化遺産保護

 ミャンマーは、インドと中国の間に位置し、歴史上幾多の民族が移り住むとともに多数の王国が興亡した地域で、古来の文明の足跡を記す貴重な遺跡が数多く存在している。代表的な遺跡としてはピュー族またはビルマ族による都城跡などが知られ、特にバガン遺跡群は多数の仏塔が建ち並ぶ景観で有名である。一方で、保護の手が及ばないまま見過ごされている文化遺産も多い。ミャンマーは世界遺産条約加盟国だが、現在まで世界遺産リストに記載された物件はない(2012年調査実施時)。
 同国では60年代から軍事独裁体制が続いてきたが、2011年以降民政移管が急速に進んだ。これを受けて、日本・ミャンマー両政府間で新たな二国間関係を築くための会談が幾度も開催され、その中で、文化交流の柱の一つとして文化遺産保護の分野における協力を深めることが相互に確認された。文化遺産国際協力コンソーシアムに対しても、外務省より文化遺産保護分野における協力の具体化に向けた検討の要請が行われた。

ミャンマー文化省考古・国立博物館・図書館局長との面談

風化が進むマンダレーの木造建造物

ACTIVITIES活動内容

調査団派遣と国内外の関係機関との連携体制

文化遺産保護のための調査団派遣 
 文化遺産国際協力コンソーシアムでは、2006年の設立以来、文化遺産国際協力の推進に資する情報の収集を行っており、その一環として協力相手国に関する調査を行ってきた。外務省からの要請への対応を企画分科会の場で検討した結果、ミャンマーにおける文化遺産保護の現況と今後の国際協力に向けた展開を探るため、現地調査団の派遣を決定した。上智大学の石澤良昭教授(文化遺産国際協力コンソーシアム会長)を団長に、2012年2月に実施したこの調査では、ミャンマー側の協力要望事項等を明らかにすることに主眼を置きつつ、代表的文化遺産であるバガン遺跡群やマンダレーの木造建造物、各地の博物館や図書館などを訪問し、担当者と面談しながら、情報収集や意見交換を行った。

多様な関連機関との連携
 この他、ユネスコバンコクオフィス、在ミャンマー日本国大使館、及びJICAミャンマー事務所との面談を行い、国際機関の動向および日本側の機関の展望の聞き取りも行うことで、支援体制についての情報も収集した。調査時のミャンマー国内の窓口は、ミャンマー文化省考古・国立博物館・図書館局が担当した。派遣までの期間に、国内のミャンマー専門家と情報共有を進めた結果、同時期にアジア太平洋無形文化遺産研究センターがミャンマーの無形文化遺産の調査をすることが明らかになり、その後文化遺産国際協力コンソーシアムと連携を図った。

敬虔な仏教徒

     壁画が施された仏塔の内部空間

RESULTS結果

ミャンマーの文化遺産保護に向けて

ミャンマーの文化遺産の現状
 ミャンマーの文化遺産は全般に劣化が進んでおり、危機的な状況にあることが改めて確認された。特にバガン遺跡群では観光客が昨年来急激に増加しており、現状の観光インフラでは既に受け入れが限界に達しつつあることがわかった。ユネスコ文化遺産保存日本信託基金事業として東京大学の西村幸夫教授により90年代に提案されたマスタープランの考え方を採り入れつつ、遺跡保存と地域発展の両立、とりわけ市街地環境や所得格差の問題なども視野に入れた持続的開発をいかに実現するかが課題となっている。他方、博物館に関しても、保存施設や研究機能の不備は深刻である。さらに、どの分野にも共通することだが、専門的人材の不足も明らかである。加えて、熱心な仏教徒が多く、現地の人々の信仰の対象となっている生きた文化遺産が多い点にも着目すべきである。

海外からの支援状況
 こうした状況に対する国際支援としては、 バガン遺跡群においてインド、中国による遺跡修復協力事業が既に始動段階にあるほか、ユネスコイタリア信託基金による考古人材育成等の支援プログラムも開始されている。今後、文化遺産保護に限らず、開発を含むあらゆる分野で日本及び諸外国からのミャンマー支援の増大が見込まれる中、このような支援事業間の調整も重要になってくるものと考えている。日本には過去20年以上に亘って世界の文化遺産保護を目的とする支援活動を行ってきたノウハウが蓄積されてきたが、ミャンマーは日本が行ってきた国際協力の経験が問われる場になるであろう。

オールジャパン体制で臨む国際協力
 文化遺産国際協力コンソーシアムでは、さらに情報収集を続けるとともに、文化遺産分野における今後の日本からの協力のあり方について、広く関係諸機関と協議しながら検討を重ねている。新たにミャンマーワーキンググループも設置し、オールジャパン体制でミャンマーの文化遺産保護支援を行える枠組み作りを進めている。この調査の成果は報告書としてまとめられる。今後日本がオールジャパンとなって支援を進めるための、本報告書は基礎資料として活用して頂きたいと考えている。

遺跡に押し寄せる観光客

バガン考古博物館

国立博物館に展示されている玉座

MAP地図