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令和4年度シンポジウム「気候変動と文化遺産―いま、何が起きているのか―」を開催しました(2022.11.18)

 文化遺産国際協力コンソーシアムは、令和4年度シンポジウム「気候変動と文化遺産―いま、何が起きているのか―」を10月23日、東京大学農学部弥生講堂一条ホールにて開催しました。(文化庁及び国立文化財機構文化財防災センターとの共催)
※シンポジウムの開催概要・プログラムについては、こちらをご覧ください。

 青柳正規・文化遺産国際協力コンソーシアム会長は、冒頭あいさつで気候変動を前提とした文化遺産保護における国際的な協調と連携の強化という来たるべき課題と向き合う上で、まずは多くの人々が気候変動と文化遺産の関係を正しく理解することがその第一歩になると述べ、本シンポジウム開催の趣旨を強調しました。
 
前半は、気候変動と文化遺産に関連した研究や取り組みに関する講演があり、三人の登壇者よりそれぞれ異なる視点から気候変動と文化遺産に関する発表が行われました。

 まず、中塚武・名古屋大学大学院環境学研究科教授の「古気候学から見た過去の気候適応の記憶としての文化遺産の可能性」と題する講演では、中部日本の樹木年輪に含まれる酸素同位体比から過去数千年間の夏季の降水量の変動を一年単位で復元したデータを、日本や中国の史資料と比較することにより、過去の気候変動に対峙した人々の成功と失敗の記憶が読み取れるという研究成果が紹介されました。また、文化遺産に刻まれた気候適応の記憶に学ぶためには、数十年周期の変動に対する人間社会の脆弱性という視点から過去の人々の営みの意味を理解する必要があり、未だ十分には明らかにされていない気候適応の歴史的な記憶を慎重かつ総合的な研究を通じて文化遺産から読みだすことができれば、気候変動の克服という人類史的課題の達成に成功するかもしれないとの展望が述べられました。

 次に、ウィリアム・メガリー・イコモス気候変動ワーキンググループ座長より、「我々の過去を未来へ:文化遺産と気候変動の緊急事態」と題して、イコモスをはじめとするこの分野での取り組みについて報告されました。まず、コミュニティに焦点を当てた新しいアプローチとして、「CVI アフリカプロジェクト」を取り上げ、文化遺産専門家と気候科学者が協働して開発した科学的な価値評価手法に基づいて世界遺産の「気候に対する脆弱性」を評価するためのツールが紹介されました。また、ヘリテージ・オン・ジ・エッジプロジェクトを例に、象徴的な文化遺産が「気候変動コミュニケーション(climate communication)」において気候変動対策を促す力になること、新たなツールと方法論の必要性、人々に対して気候変動の緊急性を訴えかける上での場所に根ざしたストーリーと革新的なテクノロジーの意義が強調されました。

 続いて、石村智・東京文化財研究所無形文化遺産部音声映像記録研究室長より「気候変動と伝統的知識:オセアニアの事例から」と題して、2021年12月にユネスコ・イコモス・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の三者が共催した国際会議「Culture, Heritage and Climate Change」での議論を踏まえ、無形文化遺産としての伝統的知識が気候変動の影響により危機に瀕している状況が紹介されました。具体例として、キリバスの伝統的農耕技術「ピット灌漑(pit irrigation)」と、フィジーにおけるサイクロンからの復興過程で伝統的知識が変容したケースを取り上げて、伝統的知識は地域の人々のアイデンティティと深く結びついた重要なものであり、伝統的知識を守るには地域の人々の協力が欠かせないことに言及しつつ、気候変動の影響から伝統的知識を保護することの必要性が強調されました。

 後半のパネルディスカッションでは、園田直子・国立民族学博物館教授をモデレーターとして、上記3名の講演者に建石徹・文化財防災センター副センター長を加えたパネリストにより、活発な議論が展開されました。最初に建石副センター長が東日本大震災後における文化財防災の取り組みと課題を紹介した後、会場も交えて、気候変動が文化遺産保護の活動に与える影響や、文化遺産をかたちづくる伝統的な知識が気候変動対策の鍵となる可能性などをめぐって、様々な意見が交わされました。

 最後に、高妻洋成・文化財防災センター長より閉会のあいさつがあり、引き続き多くの人々の知恵を集めながら、この課題に取り組んでいくことの重要性が確認されました。

 本シンポジウムは、コンソーシアムにとって、コロナ禍以降で初めての対面開催イベントでしたが、国内外から広く参加いただいたオンライン配信とあわせ、200名に近い方々にご参加いただくことができました。本シンポジウムの開催にあたり、ご協力いただいた関係各位、ならびに参加者の皆様に対し、主催者より改めて御礼申し上げます。

※シンポジウムを収録した動画は、コンソーシア
ムYouTubeチャンネル
にて公開する予定です。どうぞお楽しみに。チャンネル登録もぜひお願いします。

 

写真説明(左から右へ):

1:青柳正規氏による開会挨拶;2:中塚武氏による講演;3:ウィリアム・メガリー氏による講演
4:石村智氏による講演;5:モデレーターの園田直子氏;6:パネリストの建石徹
7:パネルディスカッションの様子;8:パネルディスカッションの様子;9:高妻洋成氏による閉会挨拶

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