ラーヤ遺跡およびワーディ・アットゥール修道院遺跡の発掘調査を3回実施した。この結果、ラーヤ遺跡城塞部で9世紀頃には存在した古い様式のモスクを発見した。モスク遺構にはミフラーブの上部が復元可能な状態で埋まっていた。この円周部にはロゼット文などが描かれていた。このモスクの発見は、ファーティマ朝時代と考えられていたシナイ半島南部のイスラーム化の時期を2世紀近く早める証拠となるであろう。
2000年度に発見したエジプト最大級のナークース山岩壁碑文群では、約1700点の碑文中に930点のアラビア語碑文が含まれていた。この碑文群の解読・研究は実際に旅した人々の生の記録であること、人々の出身地1移動した年などを明らかにし、岩壁碑文がルート研究の知られざる史料であることを証明した。また、碑文群の存在が、アブー・カブス浜とナークース浦に今まで知られていなかった港としての機能を付加することとなった。この結果、聖カタリーナ修道院を要のひとつとする南シナイの「陸のネットワーク」はラーヤあるいはトゥールの港をもって「海のネットワーク」と点的に接するのではなく、約30kmの幅を持つ面として接していることが明らかとなった。
今まで文献史料の欠落を理由に研究されていなかうたシナイ半島南部のルート研究は、聖者廟研究、岩壁碑文研究によって実証的に明らかにされつつある。
発掘した上記2遺跡およびトゥール・キーラーニー遺跡からは多種多様な出土品が見られる。トゥール文書、ラーディー家文書、ラーヤ・パピルス文書、中国陶磁器、イスラーム陶器、ラスター彩陶器、ガラス器、金属製品、ステアタイト(凍石)製品、土製箱型香炉、カリフ・アルマァムーン時代の金貨など、中近東地域、地中海世界、インド洋世界、東シナ海世界とのかかわりを示す資料が蓄積されている。ラーヤ・トゥール地域の地域史が明らかになりつつあるのみならず、同地域と外部世界との関係史が解明されつつある。
港をめぐる地域史・世界史の動態的研究-ラーヤ港、トゥール港、スエズ港の考古学的、歴史学的、人類学的研究-
- 事業名称
- 港をめぐる地域史・世界史の動態的研究-ラーヤ港、トゥール港、スエズ港の考古学的、歴史学的、人類学的研究-
- 実施地域・国
- エジプト
- 対象とする文化遺産の名称
- ラーヤ遺跡およびワーディ・アットゥール修道院遺跡
- 地域
- 中東
- 文化遺産の分類
- 考古遺跡
- 期間
- 1999年 ~ 2001年
- 協力の種類・事業区分
- 学術調査・研究
- 資金源
- 科研費