【目的】
2006~2010年度:西アジア諸国、とくに紛争後にあるアフガニスタンやイラクの文化遺産の調査研究を行うとともに、文化遺産の保存・修復を支援し、関係する技術の移転を図り、当該国における専門家育成を行う。また、あわせて周辺地域の文化財調査研究を実施し、西アジア諸国等における文化財の保存協力事業に役立てる。
2011・2012年度:西アジア諸国、とくに内線・紛争によって危機にさらされているアフガニスタン及びイラクの文化遺産の調査研究や文化遺産の保護・保存修復事業を通して、技術移転及び人材育成を図り、自国民の手による文化財保護事業の確立の支援を目指す。また、あわせて周辺地域(特に中央アジア、インド、コーカサス)の文化遺産の調査研究・保護への協力を実施する。
【成果】
1.アフガニスタン(バーミヤーン)
2006年度:第6次ミッション(2006年6月19日~7月14日)及び第7次ミッション(2006年9月11日~10月16日)をバーミヤーンに派遣し、バーミヤーン遺跡の保存修復事業を実施するとともに、アフガニスタン人専門家の人材育成を行った。
2007年度:(1)第8次ミッション(2007年6月9日~7月15日)をバーミヤーンに派遣し、バーミヤーン遺跡の保存修復事業を実施するとともに、アフガニスタン人専門家の人材育成を行った。なお、2007(平成19)年秋に第9次ミッションを派遣する予定であったが、アフガニスタンの治安の悪化により、派遣を中止した。(2)バーミヤーン仏教石窟出土の仏典の保存修復、(3)「バーミヤーン遺跡保存に関する第6回専門家作業グループ国際会議及び国際シンポジウム」開催及び参加、(4)『アフガニスタン文化遺産調査資料集』の出版、(5)バーミヤーン仏教壁画の年代測定
2008年度:2008(平成20)年度は、アフガニスタン国内の治安の悪化に鑑み、バーミヤーンへのミッションの派遣を見合わせ、日本国内等において可能な協力事業を実施した。なお、文化財専門家研修事業に関しては、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による「バーミヤーン遺跡の保護」事業と連携して実施した。
2009~2010年度:ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による「バーミヤーン遺跡の保護」事業と連携し、バーミヤーン遺跡の保存修復事業を実施するとともに、日本国内にてアフガニスタン人専門家の人材育成事業を行った。
2011年度:バーミヤーン遺跡保存のための専門家会議(12月6日~8日、東京、ユネスコと共催)を開催、国際シンポジウム「大仏破壊から10年 世界遺産バーミヤーン遺跡の現状と未来」を開催、アフガニスタン文化遺産調査資料集別冊第4巻:バーミヤーン遺跡資料集1『バーミヤーン谷中心部の文化的景観:1970年代』及び『Preliminary Report on the Safeguarding of the Bamiyan Site 2009-2010 -9th&10th Mission-』を刊行した。
2012年度:ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による「バーミヤーン遺跡保存事業」と連携し、バーミヤーン遺跡の保存修復を実施するとともに、アフガニスタンの考古学専門家の人材育成・技術移転を実施した。また、バーミヤーン遺跡の保存にむけた資料集を作成、刊行した。
2.イラク
2006~2007年度:イラク文化財専門家派遣事業
2008~2010年度:イラク人専門家の人材を育成し、イラク人による文化財復興を支援する。本事業は、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による「バグダードにあるイラク国立博物館の保存修復室復興事業」と連携して実施した。
2011年度:イラク国立博物館により保存修復家1名をアルメニアに招聘し、金属製品の保存修復に関する人材育成を実施する予定であったが、諸般の事情により招聘ができなかったため、次年度に延期して実施する予定である。
2012年度:イラク人文化財専門家を育成し、イラク人による文化財復興を支援する。イラク国立博物館より保存修復家1名をアルメニアに招聘し、11月21日~28日にかけてアルメニア共和国歴史博物館にて開催した「考古青銅製品の保存修復に関する国際ワークショップ」と連携して、保存修復に関する人材育成を実施した。
3.西アジア周辺諸国における文化遺産保護に関する調査・研究等
2007年度:(1)タジキスタン:タジキスタン共和国科学アカデミーの歴史・考古・民俗学研究所と文化遺産の保護に関する包括的な合意書及び国立古物博物館所蔵の壁画の保存修復協力に関する合意書を締結した(2008年3月10日)。(2)インド:インドのアジャンター石窟の壁画の保存修復に関する共同事業の実施のために、ミッション(2007年12月2日~12月6日)を派遣し、共同事業の合意書締結に向けての意見交換を行った。
2008年度:(1)タジキスタン:タジキスタン国立古物博物館が所蔵する壁画片の保存修復、(2)インド:アジャンター壁画の保存修復
2009年度:(1)トルコ:カッパドキア石窟壁画の状態調査、(2)シリア:デデリエ洞窟の遺構の保存修復のための状態調査、(3)タジキスタン:タジキスタン国立古代博物館が所蔵する壁画片の保存修復及び文化財専門家の人材育成・技術移転、(4)インド:アジャンター壁画の保存修復、アジャンター遺跡の保存修復にむけた専門家会議、(5)中央アジア諸国:中央アジア諸国の文化遺産のドキュメンテーション、(6)エジプト:JICA事業「エジプト国大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト」への協力
2010年度:(1)トルコ:カッパドキア石窟壁画の保存修復にむけた基礎調査、(2)タジキスタン:タジキスタン国立古代博物館が所蔵する壁画断片の保存修復及び保存修復専門家の人材育成・技術移転、(3)インド:アジャンター壁画の保存修復、(4)エジプト:JICA受託「エジプト国大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト(フェーズ1)」にかかる国内支援業務、(5)アルメニア:文化遺産国際協力コンソーシアムの協力相手国調査と連携して、2月7日から13日にかけて、アルメニア文化省と関係機関の担当者と面談し、今後の協力事業の可能性について意見交換を行った。
2011年度:(1)トルコ:カッパドキア石窟壁画の保存修復(ユネスコ・日本文化遺産保存信託基金)の実施にむけた計画の策定を行った。(2)インド:インド考古局保存修復専門家1名を日本に招聘し、「アジャンター遺跡の保存修復にむけた専門家会議2011」を7月27日に開催した。アジャンター壁画の保存修復に関する成果の共有、および現場での補足調査、人材育成を2月19日~3月3日にかけて継続して実施した。また、『アジャンター壁画の保存修復に関する調査研究事業―第2窟、9窟壁画のデジタルドキュメンテーション』を刊行した。(3)タジキスタン:国立古代博物館所蔵の壁画片の保存修復を10月9日~11月8日にかけて行い、文化財専門家の人材育成・技術移転に関する協力を継続して実施した。また、報告書『タジキスタン共和国科学アカデミー歴史・考古・民族研究所アーカイヴ カフカハ遺跡群の図面と出土品(土器と木彫)』、および『タジキスタン国立古代博物館所蔵壁画断片の保存修復 2010年度(第8次~第10次ミッション)』を刊行した。(4)中央アジア:中央アジア各国(キルギス共和国、カザフスタン)における考古遺跡の保存とドキュメンテーションに関する協力を実施した。(5)コーカサス:アルメニア歴史博物館との合意書を6月24日に締結し、考古金属資料の保存修復に関する協力事業を開始した。考古青銅遺物の保存修復に関して、国内ワークショップを1月24日~2月3日に、国際ワークショップを2月7日~11日に実施した。(6)エジプト:JICA事業「大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト」のフェーズⅠ及びフェーズⅡにかかる国内支援業務を継続して実施した。
2012年度:(1) インド:アジャンター壁画の保存修復に関する報告書を作成、刊行した。(2) 中央アジア:タジキスタン、キルギス、カザフスタンの文化遺産に対する協力等を行った。(3) エジプト:
JICA事業「エジプト国大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト」のフェーズⅡにかかる国内
支援業務を継続して実施した。(4) コーカサス:アルメニアと保存修復に関する協力、ワークショップを開催した。
4.国際会議等への参加:2008~2012年度
西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業
- 事業名称
- 西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業
- 実施地域・国
- 複数国/地域横断
- 地域
- 中東
- 文化遺産の分類
- 考古遺跡、 その他(博物館)
- 事業実施機関
- 東京文化財研究所
- 期間
- 2006年 ~ 2012年
- 協力の種類・事業区分
- 意識啓発・普及活動、 人材育成、 保存修復、 学術調査・研究
- 資金源
- 独立行政法人(JICA除く)
活動内容
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