1 緒言
化粧皿と呼ぶ石製の小さな皿がパキスタン西北部のアフガニスタン国境地帯にかかる紀元前後代に栄えた古代ガンダーラ地方の遺跡から出土する。皿の用途は、顔料に香油を加え皿上ですりつぶして室内の卓上に置き使用するとされてきた。
一般的な化粧皿の直径は10数cm程、底面から上縁表面まで高さ数cm前後の浅い碗状の皿で削り易い現地産片岩や凍石で製作されるが、少数の板状やテラコッタ製化粧皿もある。
化粧皿の様式は、表面上縁から内側には複数の区画をもうけ、その区画中心、または重要な区画に主題となるテーマ、神話上の人物や怪獣などを浮彫で表現し、その残り1/4程の凹面に幾何学文(貝文)や花文で装飾して香料置きや顔料とバルサム油を混ぜる区画を持つ。
その区画された凹面を表面観察すると、刃物による線状痕がある反面、摩耗した状態まで様々であり色々な応用があったと考えられる。
化粧皿の底面は、ロクロで円弧状に成形した後、大部分が無文であるが、時に花文や幾何学文を線刻する例がある。
皿の表面には初期において西方のギリシャ神話テーマを浮彫りに採用しているにもかかわらず、ガンダーラ以西のヘレニズムから西アジアの文化圏にかけて化粧皿と直結するものがないため化粧皿の誕生から終わりまでには不明な点が多い。
本稿では、古代ガンダーラ地方に花開いた化粧皿について類似形態と技法を有する資料と共に化粧皿の誕生と終焉及びその文化を考察する。
シルクロードの十字路に誕生した化粧皿とその文化の研究-古代ガンダーラにおける化粧皿の誕生から終わりまで-
- 事業名称
- シルクロードの十字路に誕生した化粧皿とその文化の研究-古代ガンダーラにおける化粧皿の誕生から終わりまで-
- 実施地域・国
- アフガニスタン
- 地域
- 中東
- 事業実施機関
- 神戸芸術工科大学芸術工学部
- 期間
- 1988年 ~ 1988年
- 協力の種類・事業区分
- 学術調査・研究