自律的な文書保存活動を目指して ―南アラビア・ハドラマウト地方における伝統文書の活用・継承

事業名称
自律的な文書保存活動を目指して ―南アラビア・ハドラマウト地方における伝統文書の活用・継承
実施地域・国
イエメン
地域
中東
事業実施機関
慶應義塾大学商学部
期間
2010年 ~ 2010年
協力の種類・事業区分
資金提供、 学術調査・研究
資金源
民間財団

活動内容

本企画は2007年度に助成を受けたプロジエクト「民家の物置からインド洋を眺める一イエメン、ハドラマウト地方における民間文書の保存、公開(D07-Q-019)」の成果をハドラマウト内で活用・継承することを目的としていた。しかし、諸般の事情により期間内に成果を上げることができず、失敗に終わった。

ハドラマウトは歴史的にインド洋沿岸地域とのつながりが強く、ハドラミー(ハドラマウト出身者)は現在に至るまで国家の枠組みを越える形でコミュニテイーを作っている。つまり、ハラマウトの伝統文書は、そのままインド洋の歴史の記録でもある。2007年度の助成では、ハドラマウトの旧家に保存されている書簡、契約文書、遺言、誓約書など269点を収集することができた。これらの文書はデジタル化され、タリームにある私設図書館・文書館に収蔵されている。

本企画では、影印本の編集・出版・販売をイエメンで行い、その売り上げを更なる伝統文書出版に役立てる予定であった。また将来ハドラマウト関係の国際学会が開催される場合には、そこで配布する可能性も探ることになっていた。

しかし、以下の理由によりプロジェクトを進めることができなくなった。

まず、本企画が採択された後、イエメンの政情が不安定になり、プロジエクト代表者の新井がドラマウトを訪れることが困難になった。プロジェクト期間中は、在サナア日本大使館が閉鎖されていた時期もあり、現在に至るまで外務省から退避勧告が出されている。このような状況の中、プロジエクト参加者のアブドゥルラフマーン・バルファキーフ氏、その家族の日常生活にも支障を来すようになった。

もうひとつの理由は、代表者が定期的にハドラマウトに行くことが不可能になったため、進捗状況をその都度確認しながらプロジェクトを進めることができなくなったことが挙げられる。当初、成果出版のアラビア語部分の執筆はプロジェクト参加者であるアブドウルラフマーン・バファキーフ氏に委ねる予定であったが、作業を進めていくにしたがって、代表者の積極的な関与が不可欠であることが明らかになった。この点、代表者の見通しが甘かったことは認めざるをえない。

最終的に、2013年4月下旬から5月上旬にかけ、アブドゥルラフマーン・バルファキーフ氏をジャカルタに招き、在外研究で同地に赴いていた代表者と、成果に含めるべき文書の確定、内容や編集の確定を行った。しかし、諸般の事情によりその後も執筆は進まず、最終的にプロジェクト期間内に出版までこぎつけることは不可能だと判断した。

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