現地調査及び文献調査、そしてワークショップ、シンポジウムにおける討議を経て、個人、集団、地域社会、国家の相互作用に関連して、次のことが明らかにされた。
1)半島部同様、「民族」と政治集団は密接に関連するが、有力な集団が不在のサバにおいては、政治集団間の境界は流動的である。
2)連邦の影響力の増大に伴い、サバでは元来少数者である「マレー人」が増加しつつあり、この過程にはムスリムである外来のサマ(バジャウ)、ブギス等が大きな役割を果たしている。
3)マレーシア域内への不法入国ないし、域内での不法滞在に関しては、取り締まりが強化されつつあり、ガヤ島のフィリピン人や、コタキナバル市内のブギス人は目立たなくなっている。
4)不法入国・滞在者の大部分を占めるフィリピン、インドネシアにおいては、自国民の出国管理をさして重視していない。国境付近の海上を生活圏とするフィリピンのバジャウにおいては、越境は単なる移動の連続であるが、インドネシアからの入国者は、しばしば、国境付近のヌヌカンを始め、高度に組織化されたビジネスによって送り込まれる。また、ブギスは親族の、フロレス出身者は教会を拠点とする強固なネットワークをサバに有している。
5)ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンにまたがるBIMP-EAGA構想は、資源の相補性を基盤とする経済開発計画であるが、越境の容易な境域において行われてきた経済活動を国家管理の下に置こうとする狙いも含まれている、と考えられる。
6)観光産業および農園における労働者として、フィリピン、インドネシアからの出稼ぎ労働者は、サバ経済に不可欠の存在であるが、労働者の流入を何らかの形で合法化する動きは見られず、低コストの労働力として利用されているといってもよい。
ボルネオ及びその周辺部における移民・出稼ぎに関する文化人類学的研究
- 事業名称
- ボルネオ及びその周辺部における移民・出稼ぎに関する文化人類学的研究
- 実施地域・国
- 複数国/地域横断
- 地域
- アジア
- 事業実施機関
- 東京外国語大学
- 期間
- 2001年 ~ 2004年
- 協力の種類・事業区分
- 学術調査・研究
- 資金源
- 科研費