アフガニスタン国立公文書館所蔵文字史・史料群の調査 整理・保存に関する基礎的研究

事業名称
アフガニスタン国立公文書館所蔵文字史・史料群の調査 整理・保存に関する基礎的研究
実施地域・国
アフガニスタン
対象とする文化遺産の名称
アフガニスタン国立公文書館
地域
中東
文化遺産の分類
考古遺物・美術品・歴史資料
事業実施機関
東京外国語大学外国語学部
期間
2005年 ~ 2006年
協力の種類・事業区分
学術調査・研究、 その他
資金源
大学法人

背景

1. 研究の背景・目的

本研究は、アフガニスタンの情報・文化省(現在の文化・青年省)から2003年6月に提示された、アフガニスタン国立公文書館(同省管轄)所蔵の文字史・資料類の調査・整理・保存に関する協力要請を受けて企画されたものである。同年8月には八尾師がその実現可能性に関する調査を行い、2004年5月には東京外国語大学と同省との間で本件に関する基本合意書が取り交わされた。
基本合意書にも謳われている本研究の目的は、同館所蔵の各種アイテムの内、文字史・資料群(写本類を除く)の全体像を調査した上で、重要と思われる史・資料群についての整理作業(具体的には目録の作成)を行い、更に、特に重要と思われるものについては、複製(デジタル化を意図)を作成することで、その保存を図ることにある。
同館所蔵の文字史・資料群についてのこうした試みは、世界的に見てもこれまで全く行なわれた形跡がなく、従って、当該研究は、これまで全く知られていなかった貴重な情報を我々の共有財産として提供してくれるものである。のみならず、現在、日本が国家を挙げて取り組んでいるアフガニスタンヘの文化復興支援事業の一翼を担うものでもあり、その意味では、国際貢献の一端を示す好機でもある。

活動内容

2. 研究の方法・成果

1)これまで全くその実態が知られていなかった、同館所蔵文字史・資料群のうち、写本類をのぞく所蔵アイテムに関する全体調査の結果、大まかな所蔵傾向が明らかとなり、それに基づく分類作業が一応完了した。分類結果のみを提示すると以下のようになる。1)新聞類、2)雑誌・年間類、3)勅令、4)宣言・声明・布告類、5)公信、6)私信、7)各種ファイル・メモ・ノート類、8)取引証書・保証書類、9)契約書類、10)同意書・訴状類、11)政府協定書.プロトコル類、12)アルバム類、13)手形・領収書・解約書類、14)学位証明書.認証状類、15)規約・定款類、16)歴史地図類、17)貨幣・印章類、18)書写・絵画・ミニアチュール類、19)ロヤ・ジルガ(議会)関係文書類、20)法令集、21)パンフレット類、22)アブドウル・ラフマーン[在位1880~1901]時代の勅令[これらも勅令には違いないが、その点数の多さ、時代的重要性もあり、同館ではひとつのまとまったコレクションとして別置されている]。
2)一応の分類作業が終了したことを受けて、現地作業担当者ら(同館歴史資料部門スタッフ:総勢4名)との検討・協議の結果、整理(目録作成)作業としては、手始めに新開類を手がけることとした。理由は、作業自体が未だ試験的段階であることを勘案すると、新開コレクションが分量的にも、データ収集の難易度からしても、最も適当であるとの判断からであった。実際に作業に取り掛かったのは八尾師のカーブル滞在期間中(2006年8月4日-9月5日)であったが、同館歴史資料部門の総力を挙げて、当該作業に当たった結果、当初の予想をはるかに上回るスピードで作業が進み、僅か一ヶ月間に過ぎない八尾師のカーブル滞在期間中に基礎的データの収集をはぼ終えることが出来た。これらを整理し、必要な解説を加えた上で、今年(2007年)夏頃にはなんらかの形で公表する予定である。とりあえず当該コレクションの概要を示しておく。同館の所蔵整理番号別としては、333点、またタイトル別では、アフガニスタン国内発行によるものが71タイトル、イランでの発行にかかるものが27タイトル、ラホール(パキスタン)発行のものが1タイトル、カルカッタ(インド)発行のものが1タイトル、ベルリン発行のものが1タイトルであり、総点数は101タイトルであった。分量的には膨大とは言えないまでも、国立公文書館の名に恥じない所蔵内容となっている。例えば、現存するアフガニスタンで最も古い新開とされる「シャムソン・ナハール紙Shams on-Nahar」、1928年の創刊以来、息の長い発行を続けている「アニース紙Anis」、アフガニスタンに史上初めて共産党政権を樹立したアフガニスタン人民民主党ハルグ派の機関紙「ハルグ紙Khalq」など、同国の近現代史研究には不可欠の諸紙が含まれ、その何れも収集内容の完成度は高い。

結果

3.研究の将来計画・課題

上述の通り、現在のところ、目録作成用の基礎データの収集が完了しているのは、22項目に分類されることとなった所蔵文字史.資料群のうち、1)の新開類のみである。尤も、次の対象分野として、3)の勅令(フアルマーン)[22)に分類されているアブドウル・ラフマーン期の勅令類も合わせて作業を行なう予定である]が選定され、既にデータ収集作業が開始されている。2004年5月に調印された基本合意書では同館における我々のプロジェクトは六年間とされているが、当然、それで終わる仕事ではない。また、危機に瀕している貴重なアイテムの保存作業も急がれる状況にある。今回の経験を活かし、今後のためのより精緻な実行計画を立案した上で、現地作業担当者にとってのよき協働者として、整理・保存作業を進めてゆきたいと考えている。そして、ゆくゆくは同館所蔵のこれら一級の史・資料類を、アフガニスタン近現代史研究、アフガニスタン地域研究の資料的閉塞状況を打破し、新たな研究の地平を切り開くための基本的手立てとして活用する方途を模索したいと考えている。

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