1.発掘・考古調査・研究
(1)Banteay Kdat遺跡内の発掘調査:第16次調査の継続であるが、前柱殿南側にあるラテライト柱積み遺構の解明およびその遺跡と前柱殿との建築年代の関係の考察が主要テーマ。両遺構の間を発掘し、その裏付けをとった。(2)成果:(A)前柱殿とラテライトはほぼ同時代。(B)柱穴跡の検証からラテライト遺構は木造瓦葺であると推察される。(C)復元想像図の作成。(D)バイヨン寺院時代と同じ褐釉陶器片、瓦などが多数発掘。(3)アンコール時代の大規模窯跡調査および新窯跡7カ所の発見。1995年8月の調査ではRun Ta EK村に4基の窯跡とVaken村に1基を確認したのであった。1996年3月の調査ではRUN Ta EK村ではさらに7基の窯跡が新しく発見され、Vaken村でもう1カ所、そしてPhum Bos(Srok Sothikon)、さらにPre Rup遺跡に近接した1カ所も発見された。後者2基については未踏査であるが、その他については表面採取などにより窯跡であることを確認した。しかし、Run Ta EK村の場合、1995年8月調査次に露出していた約180点のPotteries、Rooftiles、Ceramicsなどは消えうせ、だれが持ち去ったか行方不明である。これら大量の破片などは窯跡の規模、何を製作していたか、年代の比較研究などのために必要である。(4)成果:(A)アンコール東部地域にはRun Ta EKなど大規模窯跡群がある。これまで不明であったこれらPotteres、Rooftles、Ceramics、生活用具などの製作場所が判明した。(B)これら陶片や瓦片などの調査・分析により、当時の製作技術、容器の用途、芸術価値などが捉えられ、本格発掘以前におおよその検討をつけることができる。(C)行方不明であるこれら陶片などは重要な資料であるので、APSARAは鋭意回収に努め、将来の展示品にもなるので持ち去った者に返却するよう促す必要がある。(D)窯跡地のほとんどは私有地であるので、地主の了解のもとに棚などを作り、保護していくことが求められる。(E)地主の了解を得て実測を実施し、周辺も含めて広く保護地域を画定する。(F)近い将来「アンコール陶磁器博物館」を設立し、村人の雇用を促進し、これら陶磁片と窯跡遺址は村興しの文化資源とする。
2.地質・岩石調査研究
(1)調査場所:Banteay Kdai、Roluos Area。(2)共振法による石材(砂岩とラテライト等)の劣化状況の診断。(3)砂岩の強度の変化と水の問題。(4)成果:(A)水を含んだ砂岩はもとの強度の40%〜50%の強度しかない。水を含んだラテライトはもとの強度の30%〜40%の強度。(B)砂岩は湿潤状態から乾燥状態に戻るにのに1週間から10日間かかる。(C)遺跡の修復の場合、莫大な荷重を乗せる下部石材の強度を十分に考慮しなければならない。さらに、石材は溜水、排水などにより変形し、破壊につながるので留意しなければならない。
3.建築、材料工学調査・研究
(1)調査場所:Banteay Kdai Consevation d'Angkor Vat。(2)Banteay Kdai遺跡の構築編年を建物開口部(窓など)の変化と手直し箇所の検証により解明した。(3)水平レヴェルの行程差の実測により、雨季と乾季の数ミリ単位の上下の変化に注目した。(4)Angkor Vat西参道北部分の実測図の作成。(5)材料工学の観点から浸水防止剤、カビ止めなどの実験に着手。(6)成果:(A)Banteay Kdaiの開口部の様式変化から構築編年がほぼ判明した。(B)遺跡全体の数ミリ単位の不同単位などを確認。(C)無害の浸水防止剤・カビ止め剤などの塗布試験を始めた。砂岩と水とカビの問題を考える資料作りに着手した。(D)Kdai中央部塔堂の部材落下防止のため、ビニール製のベルトを鉢巻状に巻き付けた。部材落下危険箇所のサポート支柱の設置を102カ所実施した。
4.社会・地域文化調査・研究
(1)北スラ・スラン村の社会経済調査。(2)遺跡・村落・森林の共存共生プロジェクトの開始。(3)成果:(A)北スラ・スラン村の予備調査報告をまとめた。(B)農村調査は稲作の実態・農業外就労(遺跡人夫など)などについて聞き取り調査を実施した。(C)この調査に基づき村発展のマスタープランを作成する。
5.環境水質調査・研究
(1)シェムリアップ川流域の水質調査、家庭配水と河川の利用(木浴・洗濯など)の実態調査。(2)州水産省と共同でトンレ・サップ湖岸等の環境調査を実施。
カンボジア・アルコールトム遺跡学術調査
- 事業名称
- カンボジア・アルコールトム遺跡学術調査
- 実施地域・国
- カンボジア
- 対象とする文化遺産の名称
- アンコール
- 地域
- アジア
- 文化遺産の分類
- 考古遺跡
- 事業実施機関
- 上智大学外国語学部アジア文化研究所
- 期間
- 1993年 ~ 1995年
- 協力の種類・事業区分
- 学術調査・研究
- 資金源
- 科研費