紛争は、無形文化遺産の実践者や継承者を含む地域住民にネガティブな影響を及ぼす。このような状況においては、人々によって受け継がれてきた無形文化遺産は、人命の喪失や強制的な移住など様々な理由により、短期間のうちに消滅したり、その危機に直面する。紛争により被害を受けた文化遺産の緊急保護は国際的に注目を集めており、ユネスコ中期戦略2014-2021(37C/4)の中でも、紛争後・災害後(PCPD)状況に対する対応が緊急の課題として挙げられている。しかしながら、主要な活動は有形文化遺産を対象としており、無形文化遺産については研究されておらず、状況も不明である。こうした状況を踏まえ、本事業ではアジアのポストコンフリクト国等の一部地域を対象とする事例研究を行い、紛争により打撃を受けた無形文化遺産の現状を把握する。紛争により影響を受けた地域での調査の実施には困難が伴う可能性があるため、スリランカの北部・東部地域での調査実施を優先的に行う2。同時に、東ティモールやアフガニスタンなど、他のポストコンフリクト国等における調査実施も視野に入れ、その可能性についても模索する。
アジアのポストコンフリクト国等を対象とした無形文化遺産の緊急保護支援の研究
- 事業名称
- アジアのポストコンフリクト国等を対象とした無形文化遺産の緊急保護支援の研究
- 実施地域・国
- アフガニスタン
- 地域
- 複数地域・国などにまたがるもの / 特定の遺産によらないもの・遺産位置の特定ができないもの
- 文化遺産の分類
- 無形遺産
- 事業実施機関
- 独立行政法人国立文化財機構 アジア太平洋無形文化遺産研究センター
- 期間
- 2017年 ~ 2020年
- 協力の種類・事業区分
- 学術調査・研究
- 資金源
- その他
背景
活動内容
本事業では、紛争後状況における無形文化遺産の実態について調査を行い、無形文化遺産の継承を脅かす要因を特定する。事例調査を実施することにより、紛争後状況のコミュニティにおける、有効な無形文化遺産保護の手法やマッピングの方法論についても議論する。本事業により、紛争後の無形文化遺産の復興に貢献すると同時に、紛争後状況における無形文化遺産の研究、特にコミュニティ主体のアプローチについての研究や議論が進むことが期待される。