エジプトの雇用を守るための協力を
日本の対エジプト援助方針
エジプトはおびただしい数の遺跡や遺物が発掘されており、もはや説明が不要なほど世界によく知られた、悠久の歴史を現代に伝える国である。JICAは、日本の対エジプト援助重点分野の一つである「持続的成長と雇用創出の実現」のうちの「観光開発支援」プログラムにおいて支援を行っている。エジプトの観光セクターはGDPの4.3%(2009/2010)、雇用の12.6%(2008)を占める。また、2009年度の観光客数は1254万人、観光収入は約116億ドルであった。2011年のエジプト政変などの影響を受け、観光客数も観光収益も減少しているものの、観光業はエジプトの雇用を吸収するセクターとして依然として重要である。
大エジプト博物館の建設と文化財
JICAは2006年5月15日に「大エジプト博物館建設事業」に係る借款契約を調印した。本プロジェクトは、エジプトの自国資金で建設された「保存修復センター(The Grand Egyptian Museum Conservation Center, 以下GEM-CC)」のスタッフに対し、同円借款事業に附帯するものとして、遺物の保存修復のための諸技術を指導するものである。そもそもエジプト観光の要となるエジプト考古学博物館(The Egyptian Museum,以下EM)は1902年に開館し、施設の老朽化や展示・収蔵スペースの不足といった課題を抱えていた。新たに建設する大エジプト博物館(以下GEM)はEMの一部の遺物を含め、合計約10万点もの遺物を展示品として収容する計画である。GEM-CCのスタッフはGEMに展示予定のこれら数多くの遺物を修復するとともに、適切な管理を行っていく必要がある。なお、GEM-CCには150名を超えるスタッフが配置されている。