インドネシア・アチェ州公文書館への支援事業

事業名称
インドネシア・アチェ州公文書館への支援事業(文化遺産保護国際貢献事業)
国名
インドネシア共和国
期間
2004年~2012年
対象名
アチェ州公文書
文化遺産の分類
その他(考古遺物・美術品・文書)
実施組織
東京外国語大学
出資元
文化庁
事業区分
基礎研究、 人材育成、 保存修復

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背景

Background

アチェの文字文化財

 インドネシア、スマトラ島の北端、マラッカ海峡の入口に位置するアチェは、古くから東西交易の中継基地として栄え、東南アジアでイスラームを受容した最初(13世紀)の地域であった。アチェの王国は、イスラームの知識と文化を、東南アジアにおいて発展させる上で、大きな役割を果たし、「メッカのベランダ」と呼ばれるようになった。特に、マレー半島における強力な商業国家であったマラッカ王国の滅亡以後、イスラームの宗教活動や文芸活動に携わる学者がアチェに集まり、彼らの著作が、写本の形で残されることになった。アチェで生み出された歴史、法律、イスラームの教義や解釈、伝説に関する書物は、広く東南アジアのイスラーム化された地域に広がった。

文字文化財への被害

 2004年12月26日にスマトラ島沖で発生した大地震とそれにともなうインド洋大津波によって、インド洋沿岸の諸地域に大きな被害をもたらした。アチェ州だけでも10万人以上の死者・行方不明者が出た。尊い人命と共に、アチェや東西交易の過去を知るための重要な手がかりである貴重な文字文化財も失われた。多くの文字文化財は、その内容も書誌情報すらも知られることなく、失われてしまった。今、残された文字文化財の調査と保存が早急に必要とされている。

  • 津波後の文書館

活動内容

Activities

21世紀COEプログラム「史資料ハブ地域文化研究拠点」(2002-2006)

 東京外国語大学では、このプログラムの活動の一環として、これまで関心が払われてこなかった、アジア各地の言語で書かれた在地の文書の調査、保存、共有化に取り組み、インドネシアにおいても、パレンバン、ミナンカバウの在地文書の調査、保存、共有化を進めてきた。

被災文化財への対応

 地震津波災害の発生直後、東京外国語大学は、インドネシアの諸機関や研究者の要請を受け、アチェの史資料を中心とする文化財の復旧・保存に協力して欲しいとの要請を受けた。アチェの文字文化財は、その歴史的な重要性にもかかわらず、治安上の理由でこの地域での調査活動が進まず、その状態が危惧されていた。東京外国語大学では、この要請に応え、日本国内の関係各方面と連携し、活動きを組織的に展開するため、2005年3 月にアチェ文化財復興支援室を開設し、大学の性格にふさわしい領域での国際貢献活動を始めることになった。

  • アチェ州立博物館

  •  アチェの文字文化財

結果

Results

本プロジェクトの4つの目標

1.被災状況の調査:
 関係者、文字文化財、所蔵機関などの被災状況の確認
2.史資料修復・保存活動のコーディネーション:
 インドネシア関係諸機関間の連携を円滑化するために、地方機関、中央機関、大学などのあいだのコーディネーション
3.アチェにある史資料の実態調査:
 アチェの主要機関に残された史資料の調査・目録化の推進、保存・修復の措置や電子化等による記録
4.現地専門家の養成:
 現地における文書専門家の育成のために、文書取り扱い担当者の技能向上のための現地研修および文書取り扱い指導者の養成のための招聘研修

実施状況

本プロジェクトは、緊急調査、被災状況調査、現地との連絡体制の確立、修復・保存の基礎研修ならびに指導者研修、在地文書の調査など、2年間の活動を通じて、これらの目標の第一段階はほぼ達成し、現在では、アチェ各地に残る文字文化財の調査と保存に向けた取り組みを継続している。また、文字文化財の保存・修復から研究の分野までの、現地での幅広い人材養成にも取り組んでいる。

  • 研修風景

  • 文書調査の様子

地図

Map

Projects

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