協力相手国調査団の派遣
2009年にブータン東部を強い地震が襲い、多くの寺院や民家などが被害を受けた。文化遺産国際協力コンソーシアムにもユネスコを通じて文化遺産被災情報が届き、支援に向けた現地調査への要請があった。
日本からは1992年まで10年間にわたり、文化庁によって歴史的建造物に係る保存修復協力が行われた実績がある。しかしこの協力以降、現地の文化遺産保護に関する情報はほとんどなく、いかなる支援を行う上でも必要な、保護状況を調査する必要性が認識された。また、建造物以外の文化遺産に関する協力もあまり行われてこなかったため、同時に動産や無形遺産についても協力のニーズを幅広く把握する必要も認識された。こうして文化遺産国際協力コンソーシアムでは調査団を派遣することとなった。
調査には過去にブータンの国立図書館顧問として10年近く活躍した経験を持つチベット仏教の専門家も参加した。ブータンは仏教国であるため、国立図書館の蔵書の多くは経典である。したがって図書館は経典を収める経堂であり、一般的な図書館とは大きく異なっている。また、国立博物館に収められていたものの多くも仏画や仏像である。有形遺産においても無形的な側面にこそ本質的な重要性があると認識されているブータンにおける文化遺産保護を考えるには、大乗仏教に根ざした精神性についても十分理解する必要があることが、今回の調査で改めて認識された。
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国立図書館の収蔵品
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国立図書館での修復作業
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伝統工芸の織物。織物博物館での作業実習も行われている。