解明がもとめられるポスト・アンコール期の都
アンコール・ワットで有名なカンボジアのアンコール王朝(9世紀~15世紀)は、国内に多く残存する石造建造物や碑文等の研究により、その歴史が徐々に解明されつつある。しかし、アンコールが廃都となった15世紀から、フランスがカンボジアを保護国化するまでの間は、史料が乏しく、これまで考古発掘などの調査もほとんど行われてこなかったため、いまだ謎に包まれた部分が多い。ウドンとロンヴェークは、そのポスト・アンコール期といわれる時代の王都である。
アンコールが放棄された後、王都はバサン(コンポン・チャム州)、プノンペン(現在の首都)、ロンヴェーク、ウドン(カンダール州)と移動する。ロンヴェークは、16世紀建設、ウドンは17世紀建設といわれる都で、地理的にも近い。本事業は、奈良文化財研究所が、文化遺産保護国際貢献事業として文化庁より受託するもので、カンボジアの考古若手専門家を対象に、考古学調査に関する技術移転をすることを目的としている。同時に、これまで明らかにされてこなかったポスト・アンコール期の都城研究に資することを目指している。