共同研究の経緯
河南省は黄河中下流域に位置し、旧石器時代から明清時代にかけて、数多くの重要遺跡が所在する。陶瓷器関連の遺跡も例外ではなく、河南省の省都鄭州と洛陽の間に位置する鞏義(ゴンイ)市では、約16万平方メートルの範囲に窯跡遺跡が分布し、なかでも大・小黄冶村や白河村では白瓷や青瓷などとともに唐三彩の窯跡があることが従来より知られていた。唐三彩は東アジアのみならず、世界各地に運ばれたことが知られ、この地域の唐三彩窯は世界的にも注目を集めている。しかしながら、鞏義市の窯跡遺跡は、小規模な発掘や分布調査がおこなわれたのみで、生産した唐三彩の全体的な様相を解明するための本格的な学術調査の実施が待たれていた。当該地域の窯跡遺跡は、日本出土唐三彩の生産地や奈良三彩の成立過程を明らかにするうえでも、たいへん重要である。
奈良文化財研究所は、以上のような背景のもとに、河南省文物考古研究所と協議し、鞏義市に所在する窯跡遺跡とその出土品の調査を継続的におこなうことで合意し、2000年に両研究所の間で共同研究の協定書を締結した。以後、両研究所間で毎年研究者が相互訪問をおこない、中国と日本における唐三彩と関連資料の調査を継続して実施している。