奈良文化財研究所と河南省文物考古研究所の共同研究−奈良三彩と唐三彩の接点を求めて−

事業名称
奈良文化財研究所と河南省文物考古研究所の共同研究−奈良三彩と唐三彩の接点を求めて−
国名
中国
期間
2000年~継続中
対象名
河南省鞏義市黄冶窯跡・白河窯跡,唐三彩,奈良三彩
文化遺産の分類
その他(考古遺物・美術品・文書)
実施組織
奈良文化財研究所、河南省文物考古研究所
出資元
奈良文化財研究所、科研費
事業区分
基礎研究

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背景

Background

共同研究の経緯

 河南省は黄河中下流域に位置し、旧石器時代から明清時代にかけて、数多くの重要遺跡が所在する。陶瓷器関連の遺跡も例外ではなく、河南省の省都鄭州と洛陽の間に位置する鞏義(ゴンイ)市では、約16万平方メートルの範囲に窯跡遺跡が分布し、なかでも大・小黄冶村や白河村では白瓷や青瓷などとともに唐三彩の窯跡があることが従来より知られていた。唐三彩は東アジアのみならず、世界各地に運ばれたことが知られ、この地域の唐三彩窯は世界的にも注目を集めている。しかしながら、鞏義市の窯跡遺跡は、小規模な発掘や分布調査がおこなわれたのみで、生産した唐三彩の全体的な様相を解明するための本格的な学術調査の実施が待たれていた。当該地域の窯跡遺跡は、日本出土唐三彩の生産地や奈良三彩の成立過程を明らかにするうえでも、たいへん重要である。
 奈良文化財研究所は、以上のような背景のもとに、河南省文物考古研究所と協議し、鞏義市に所在する窯跡遺跡とその出土品の調査を継続的におこなうことで合意し、2000年に両研究所の間で共同研究の協定書を締結した。以後、両研究所間で毎年研究者が相互訪問をおこない、中国と日本における唐三彩と関連資料の調査を継続して実施している。

  • 河南省文物考古研究所での資料調査

  • キョウ義市白河窯跡出土の唐三彩馬俑

活動内容

Activities

鞏義市唐三彩窯跡の発掘調査とその成果

2002年から2004年にかけて、大・小黄冶村に所在する黄冶窯跡の発掘調査をおこなった。黄冶窯跡からは、多数の唐三彩をはじめとした陶瓷器類や窯道具のほか、窯跡や工房など重要な遺構も検出している。この窯跡から出土した唐三彩陶沈は、奈良市大安寺出土の陶沈と文様や製作技法の上で一致し、日本出土の唐三彩の一部が、黄冶窯跡で製作されたものであることが明確になった。唐三彩のほかにも、従来揚州城などで出土品が知られていた唐代の青花瓷器を発見し、生産地を初めて特定することができた。
 次いで、2005年から2008年には、白河村に所在する白河窯跡の発掘調査を実施した。この調査では、鞏義窯跡で初めて唐三彩の馬俑が出土し、洛陽唐墓出土陶俑の生産地である可能性が高まった。唐三彩のほかにも、北魏のものと考えられる白釉瓷や青釉瓷が出土し、中国の初期白瓷の起源を考える上で貴重な成果を得ることができた。北魏の都となった洛陽城からも白河窯跡で生産されたと目される白釉瓷が出土し、両者の関連が注目されている。
 このような一連の発掘により、当初企図した日本出土の唐三彩の多くの故地が鞏義窯跡である可能性が高まった。また、日本の奈良三彩の成立に関しても重要な知見を得ることができた。

  • キョウ義市白河窯跡発掘現場

  • 陝西考古研究院での資料調査

結果

Results

中国と日本における三彩の共同調査

発掘調査のほかにも、河南省文物考古研究所や鞏義市博物館はじめ、中国各地の博物館や研究所、および日本の機関が所蔵する関連資料の調査をおこない、黄冶窯跡、白河窯跡出土品の位置づけについても検討を進めている。奈良文化財研究所の研究員が中国を訪問し、河南省の研究者とともに各機関が所蔵する唐三彩や関連資料を調査するほか、毎年中国側の研究者を招聘し、奈良文化財研究所やそのほかの機関所蔵の資料の調査をおこなってきた。また、来日した研究者には、奈良文化財研究所にて河南省の考古学調査・研究の最新成果を中心とした講演をしていただいている。
 以上のような調査・研究成果は、『鞏義黄冶唐三彩』(2003年)、『黄冶唐三彩窯の考古新発見』(2006年)という2冊の研究図録、発掘調査と考古学・文化財科学的な研究成果をまとめた『河南省鞏義市黄冶窯跡の発掘調査概報』(2010年)、ならびに飛鳥資料館における2008年度秋期特別展「まぼろしの唐代精華―黄冶唐三彩窯の考古新発見―」などによって公表してきた。また、中国で開催された学会に参加し、奈良文化財研究所の研究員が研究成果の報告もおこなっている。今後も共同研究を継続し、白河窯跡の研究図録や黄冶窯跡、白河窯跡の発掘報告書の刊行を予定している。

  • 奈良文化財研究所研究員の学会発表

  • 奈良文化財研究所での河南省研究者の講演会

地図

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