東アジアの古代都城遺跡と保存に関する研究
中国遼寧省の西部地域には、4~5世紀頃、鮮卑(せんぴ) 族による前燕(ぜんえん) ・後燕(こうえん) ・北燕(ほくえん) という国家が樹立され、これらを三燕と呼び慣わしている。この三燕の時期は、日本では古墳時代に相当し、特に武器や武具などの面で、日本の古墳文化に強く影響を及ぼしたと考えられている。この遼寧省を中心とした三燕時代の墳墓出土品や都城遺跡の調査・研究、ならびに文物の保存と遺跡の保護は中国遼寧省にとってだけでなく、日本の原始・古代史研究にとっても重要な意味を持っている。
中国では、文物の保護政策が国家的な重要課題となっている。遼寧省文物考古研究所においても、出土品の保存科学分野や大規模遺跡の保存方策の面で、他国の先進的な技術や遺跡保存事例に対する関心が非常に強い。一方、奈良文化財研究所は、出土品の保存科学的研究や保存処理技術分野で、多くの研究成果や技術の蓄積がある。また、平城宮跡の様な大規模遺跡の保存と活用の面でも、実績を積んできている。そうした遼寧省文物考古研究所の関心と、奈良文化財研究所の研究活動とが結びついて、国際的な友好共同研究という形で、双方が協力しながら中国遼寧省の文物や遺跡の調査研究と保存・保護を進めている。