海外に渡った日本の文化財
日本の文化財の役割
屏風、掛軸、漆器、武具など日本の文化財は欧米を中心に所蔵され、常設展示されているような館も少なくない。これらの文化財は、諸外国の国民が海外の文化に触れる機会を作り、文化の多様性、異なる文化への敬意を学ぶとともに、文化・芸術の国をまたいだ相互作用を知るために役立っている。
海外では困難な適切な修復
しかし、それらの文化財の保存、展示、修復方法について必ずしも正しい知識が普及しているとは言えない。特に絵画、漆器のような文化財の修復に関しては、材料と技法を熟知している必要があるが、海外には日本の文化財修復の専門家はほとんどいない。さらに修復材料や道具の入手は海外では困難かつ、入手できたとしても非常に購入費用が高くなる。
そのため、展示できずにそのまま保管されたり、不適切な処置でさらに悪化してしまう場合もある。そのような状態を憂慮する所蔵館では、日本人専門家による処置を検討するが、資金調達、修復技術者の選択も容易ではない。また、例え日本の専門家による修復が実施されることになったとしても、既に海外で不適切な処置をされた文化財の中には伝統的修復技術で対処できないことも多く、専門家が手をこまねくことも少なくない。