「蒼き狼」の都、アウラガ遺跡の調査と保護
巨大国家誕生のナゾを解く鍵
13世紀初頭にユーラシア大陸の東西にまたがる巨大国家「モンゴル帝国」を建てたチンギス・ハン。彼が本拠地としたのがアウラガ遺跡である。モンゴル帝国の最初の首都ともいえるこの遺跡は、現在の首都ウランバートルから東南約250km、ヘンティ県デリゲルハーン村の草原の中に残っている。この遺跡は、ナゾの多いチンギス・ハンの勃興と、モンゴル帝国の成立過程を解明する上で重要であると考えられているが、これまでほとんど調査・研究がなされてこなかった。
変わりゆく草原の国
アウラガ遺跡では、近くに集落や景勝地があるため、自動車が遺跡内を未秩序に往来し、そのわだちによる遺構の破壊が深刻化していた。それだけではなく、近年のモンゴルでは石炭やレアアースといった地下資源開発が進み、GDPも年率で前年度比10%ほどで推移するという発展をみせている。国民の生活水準は徐々に向上しているが、貧富の差が大きく、インフラ整備も不十分で、文化事業にまわす財政的余裕はない。さらに、文化財保護は後回しにされるだけでなく、鉱山採掘や道路整備が優先されて、貴重な遺跡がつぎつぎに破壊されているのが現状である。アウラガ遺跡付近にも石炭や石油が埋蔵されている可能性が高いということで、開発計画が議論されている。アウラガ遺跡の詳細な研究と、保存の方策をたてることが焦眉の課題となっている。