東南アジアの秘境の開放―民政移管の動きと文化遺産保護
ミャンマーは、インドと中国の間に位置し、歴史上幾多の民族が移り住むとともに多数の王国が興亡した地域で、古来の文明の足跡を記す貴重な遺跡が数多く存在している。代表的な遺跡としてはピュー族またはビルマ族による都城跡などが知られ、特にバガン遺跡群は多数の仏塔が建ち並ぶ景観で有名である。一方で、保護の手が及ばないまま見過ごされている文化遺産も多い。ミャンマーは世界遺産条約加盟国だが、現在まで世界遺産リストに記載された物件はない(2012年調査実施時)。
同国では60年代から軍事独裁体制が続いてきたが、2011年以降民政移管が急速に進んだ。これを受けて、日本・ミャンマー両政府間で新たな二国間関係を築くための会談が幾度も開催され、その中で、文化交流の柱の一つとして文化遺産保護の分野における協力を深めることが相互に確認された。文化遺産国際協力コンソーシアムに対しても、外務省より文化遺産保護分野における協力の具体化に向けた検討の要請が行われた。