文化遺産の保護に資する研修の開催にいたる背景
ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所
ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所(ACCU奈良事務所)は、文化庁や奈良県、奈良市などの協力のもと、1999年8月に開設された。
設立の契機は、1997(平成9)年に文化庁長官の私的諮問機関として設置された「アジア太平洋地域の世界文化遺産の保護に関する国際協力の在り方に関する調査研究協力者会議」において、日本の同地域における国際協力のあり方が検討されたことによる。この報告では、アジア太平洋地域における文化財保護協力活動を充実、強化するため、新たに「国内拠点」を整備する必要性が提議された。この提言を承け、ACCU奈良事務所は「国内拠点」としての役割を果たすために、数多くの文化遺産に恵まれた奈良の地に設けられた。
ACCU奈良事務所の人材養成
2000年2~3月に「アジア・太平洋地域 文化遺産保護協力事業諮問会議」「アジア・太平洋地域における文化遺産保護のための研修プログラム専門家会議」を連続して開催し、ここでACCU奈良事務所が担う役割を整理し、事業の内容を具体的に検討した。その結果、アジア・太平洋地域の日本を除く44ヶ国を対象に、主として①文化遺産の保護・修復に関する情報を収集し提供する、②文化遺産の保護・修復に携わる人材を養成するとともに情報交流の機会を設ける、③文化遺産の保護に関する国際会議の開催、といった3つの事業を行うこととなった。
これらのなかで、もっとも大きな事業は人材養成事業である。それには、各国から1名ずつ参加する集団研修、1ヶ国の2~3名を対象にした個人研修、日本から当該国に講師陣を派遣して実施するワークショップがある。