シルクロードの世界遺産登録を支援する
シルクロードと中央アジア5ヶ国
ユーラシア東西をつなぐシルクロードは、東洋と西洋の文化的、社会的、政治的統合や交流を促す「道」として、古代から現代まで脈々と生き続けている。中でも、シルクロードの主要ルート群が集中する中央アジア5ヶ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)には、シルクロードを通じヒト、モノ、情報が伝播し、集積した歴史的過程を具体的に示す文化遺産が数多く遺されている。それには、東西交易を維持管理した都市遺跡や防御施設、隊商や旅行者の宿泊施設(隊商宿など)、錫やラピスラズリなど中央アジアに固有な資源の採掘址やそれを加工した工房址、仏教、イスラム教、ゾロアスター教、ネストリウス派キリスト教など宗教の東西伝播を示す宗教施設、山地部を通過するための峠道などの自然地形、乾燥地での居住を維持するための水管理システムや農牧地の文化的景観など、極めて多様な遺産が含まれる。
世界遺産登録に向けた課題
このように多様で固有な文化遺産を数多く有する中央アジア5ヶ国だが、世界遺産への登録件数は、他地域と比較しても芳しくない。その背景には、5ヶ国の経済状況も無論考慮に入れる必要があるが、その一方で世界遺産登録を行うために必要なノウハウとそれを担う人材が総じて不足していることも主な要因として指摘できる。具体的には、考古学的遺構や建造物など対象となる文化遺産を正確に記録するドキュメンテーション技術、作成した記録を体系的に管理・利用するアーカイブ技術、文化遺産を持続的に維持継承するための保存修復技術、文化遺産の歴史的意義を科学的に説明・解釈し、遺跡公園などの形でプレゼンテーションする技術などである。