壁画の宝庫タジキスタン
タジキスタンにおける古代壁画の発見
第二次世界大戦後、ソ連邦は中央アジアの共和国に考古調査隊を派遣し、各国の遺跡を発掘した。タジキスタンでも、南部の仏教遺跡や北部のソグド人の都城址で発掘が行われ、めざましい成果を上げた。なかでも、仏教寺院やゾロアスター教神殿、富裕な市民の住居で発見された色鮮やかな壁画は、世界中の注目を集めた。これまで謎につつまれていた古代中央アジアの宗教や物質文化を、壁画の図像をてがかりに解明する研究がはじまった。
発見された壁画の保存修復
国立エルミタージュ博物館の研究員によって、脆い壁画を合成樹脂で固めてから剥がし取り、その後実験室において本格的な修復を行う方法が考案された。この方法で剥ぎとられた壁画断片の多くは、エルミタージュ博物館に運ばれ、保存修復処置が行われた。
1991年に中央アジアの他の共和国とともに、タジキスタンはソ連邦から独立した。独立後もロシアの発掘隊によって遺跡の発掘は続けられているが、出土した遺物はすべてタジキスタン国内に保管されることになった。これにより、タジキスタンで出土した遺物の保存修復は、タジキスタン国内で行わなければならない状況が生まれた。しかし、これまで遺物の保存修復はエルミタージュ博物館の主導で行われていたため、タジキスタンには、保存修復を行う体制が整っておらず、この状況に対応することができなかった。