シルクロードの隊商都市、世界遺産パルミラ遺跡
シリアは、東地中海に面する小国であり、面積では日本の約半分程度である。しかしフランスから独立した1946年以前、シリア人は支配勢力が時に応じて変わっても、東地中海全域をシャーム(シリア、レバノン、ヨルダン)という範囲としてシリアの領土と考えていた。シリアは、人類の歴史という大河の流れの真只中に存在し、メソポタミア、エジプト、ペルシャ、ギリシャ・ローマ地域から様々な文化を受け入れ、その中で独自の文化を育んできた。この地中に眠る人類史の痕跡を世界の人々が注目し、シリアの理解のもと多くの外国隊が調査に従事している。我々もこのような地に位置するパルミラ遺跡において調査に従事している。
パルミラはシリア沙漠の中央に位置する隊商都市として紀元前1世紀から紀元後3世紀に最も繁栄し、シルクロード沿線の中で西のローマと東のパルティアの力の均衡関係の中で最も繁栄した都市国家である。しかし女王ゼノビアの領土拡大路線によって274年に滅びる。パルミラ遺跡は、全宇宙を司るベル神を祭ったベル神殿を中心に様々な施設が存在し、東西6キロ、南北8キロあまりの範囲に広がっている。そしてギリシャ・ローマの例にもれず、市街地の周りに墓地が営まれている。パルミラ遺跡は、今も往時の東西交流の繁栄の跡を残しており、人々は遺跡内を自由に散策し、それを味わうことができる世界でも稀有な遺跡である。そしてこの遺跡は、1982年に世界遺産に登録されている。