太平洋の古代都市〜ナン・マドール遺跡
謎に包まれた巨大遺跡
太平洋のミクロネシア連邦ポーンペイ島には、約1.5km×0.7kmの範囲に玄武岩で構築された95の人工島で造られたナン・マドール遺跡がある。この遺跡は、西暦500年頃からおよそ1000年をかけて建設され、それぞれの人工島が王宮・神殿・王墓・居住域とした役割を持つ複合的な都市遺跡である。人々はこれらの人工島の周りをカヌーで往来していたと考えられており、この様子から「東洋のベニス」とも形容される、大洋州で最も大規模かつ壮麗な文化遺産として知られている。
ナン・マドール遺跡は現在でも多くの謎に包まれている。例えば、遺跡を構成する玄武岩は、最大のもので90トンと推算されるが、この石を10km以上離れた産出場所からどのように運び、積み上げたのかは現在でも解明されていない。
遺跡の保護と世界遺産登録
学術的にも観光資源としても重要な遺跡ではあるものの、遺跡の保護に向けた体制は未整備である。したがって以前より、遺跡周辺の植物の繁殖や、遺跡の崩壊などの進行が懸念されていた。また、大洋州は地球の三分の一を占める広大な地域であるにもかかわらず、ユネスコの世界遺産に登録されている数は非常に少ない。こうした中でミクロネシア連邦政府は、ナン・マドール遺跡の世界遺産登録を切望し、このための協力をユネスコに求めていた。
遺跡の保護と世界遺産登録を目指すためには遺跡の現状を把握する必要があり、このための調査団の派遣要請がユネスコ大洋州事務所を通じて文化遺産国際協力コンソーシアムに寄せられた。