事業の背景
サウジアラビアは、アラビア半島のほぼ大半を占め、イスラーム教の起源地として、歴史的・宗教的に価値の高い史跡が数多く存在する。また、タイマ遺跡やマダイン・サーレハ遺跡など重要な先イスラーム期の遺跡も確認されている。しかし、海外の考古学調査隊の活動が大きく制限されてきたため、最新の調査技術が紹介される機会が少なく、文化遺産に携わる若手研究者が発掘現場などで技術を磨く場が稀であった。
金沢大学は初期遊牧民の形成過程を探るため、サウジアラビア北西部のタブーク州・ジョウフ州で2012年から5ヶ年間の調査許可を取得した(代表:藤井純夫)。2013年度には、日本学術振興会の二国間交流事業の支援を受け、「サウジアラビア、タブーク州における初期遊牧民の考古学的研究」(代表:足立拓朗)がスタートした。この事業は、金沢大学とサウジアラビア考古観光委員会、キング・サウード大学の共同で実施されている。二国間交流事業は、対象国との持続的ネットワークの形成を目的としているため、調査・研究そのものが、サウジアラビア・日本の若手考古学者にとっての研修の場となるように事業を実施している。サウジアラビア側の研修参加者は、キング・サウード大学卒業のサウジアラビア考古観光委員会職員、日本側参加者は金沢大学人文学類の学生であった。本稿では、この研修活動を紹介する。