日本の優れた紙文化財保存修復技術
千年以上に亘って残ってきた日本の紙文化財
日本には絵画、書跡、文書などの紙文化財が屏風、掛軸、書籍などの形態で伝わっている。しかし日本の気候は、紙のような天然有機物を保存するにあたって、決して適しているとは言えない。四季の移り変わりは保存環境の変化を意味するが、物の保存には不向きである。さらに、温暖で湿潤な季節にはカビ、昆虫など生物の活動は活発になり、天然有機物は恰好の栄養源になる。それにもかかわらず、日本では古い紙文化財であれば千年以上経た現在まで伝わってきている。これは日本が優れた紙文化財の保存技術、修復技術を伝統的に有してきたことを意味する。
紙文化財修復技術
日本の紙文化財の保存と修復は、和紙や小麦デンプン糊のような伝統的な材料と、それらを有効に活用する装こう修理技術により可能となる。装こうとは、表具、表装などとも呼ばれる。元々は中国起源の技術だが、日本で数百年以上に亘り発展、変化を遂げて現在に至っている。この技術を海外に伝えることで、世界各国の文化財の保存修復に貢献することができると考えている。