JICA集団研修「博物館学」コース開催の背景
開発途上国・地域の博物館のための人材育成
多くの途上国・地域において、開発と経済成長を最優先するあまり、自国の文化・自然遺産が適切な保護を受けずに失われている現状がある。このようななか、博物館は、文化遺産を収集、保存、展示することで、国家・民族としてのアイデンティティを確立する場となり、またその地域の文化を世界に紹介するという重要な役割をもつ。博物館が、観光振興の要として、地域経済の成長に貢献しているという事実も見逃せない。さらには教育施設、あるいは戦乱など災害からの復興拠点としての博物館の役割も大きい。しかしながら、博物館学の理論と実践について総合的に研修できる場は世界的に見ても限られていた。
「博物館学」コースの前身
国立民族学博物館では、JICAより事業委託を受け、滋賀県立琵琶湖博物館とともに、2012年度から3年計画で「博物館学」コースを企画・運営・指導している。これは、研修対象を博物館実務の担当者に特化した、実践的な技術を学ぶ研修であり、前身の「博物館学集中コース」(2004~2011年度)に較べ、各国の観光関連分野プログラムとの連携を強化している。これらのコースに先立つ1994~2003年度には広い視野にたって観光事業の推進、教育文化活用の拠点作りに貢献できる、博物館の管理・運営に携わる指導的立場の人材の育成を目的に、JICA(国際協力機構)が主宰し、国立民族学博物館が中心となって「博物館技術(収集、保存、展示)コース」を実施していた。