2012年9月7日(金)に東京国立博物館平成館大講堂にて、第11回文化遺産国際協力コンソーシアム研究会「ブルーシールドと文化財緊急活動‐国内委員会の役割と必要性‐」を開催しました。
ブルーシールドに関わる議論のためには、博物館、遺跡・建造物、図書、歴史資料、フィルムなど文化財に関わる幅広い専門家で議論を行う必要があります。
そのため今回の研究会では、イコム日本委員会、日本博物館協会(博物館)、日本イコモス国内委員会(遺跡・建造物)、国際図書館連盟資料保存コア活動(IFLA/PAC)アジア地域センター(文書)、全国歴史資料保存利用連絡協議会(歴史資料)、日本図書館協会(図書)などの団体が後援団体としてご協力くださいました。
まず、基調講演としてUSブルーシールド代表のコリン・ヴェグナー氏より「危機に立ち向かう文化財専門家:ブルーシールドと21世紀の文化財ネットワーク」として、USブルーシールド立ち上げや実際の文化財緊急活動のご経験をお話いただきました。
続いて最初の講演として、東京文化財研究所保存修復科学センター長の岡田健氏より「“文化財レスキュー事業”の成果と課題」として、文化財レスキュー事業の活動の成果と問題点、そしてこの事業が終了した後の我が国のあり方への提言などをお話いただきました。
2番目の講演として、我が国における不動産文化財に関する緊急活動について神戸大学大学院教授の足立裕司氏より「緊急時の歴史的環境の保護とその人材確保について」として、阪神淡路大震災や、東日本大震災後の文化財ドクター事業の経験から、大規模災害から歴史的建造物を守る取り組みなどをご報告いただきました。
3番目の報告では防災インターナショナル代表の小川雄二郎氏より「ブルーシールドと文書館の防災」として、文書に関する防災への取り組みの歴史などを説明されるとともに、過去の経験からの教訓を生かし、また国際的な災害時の協力体制作りについて提言がなされました。
4番目の講演では、京都国立博物館副館長の栗原祐司氏より「ブルーシールド国内委員会について」として、ご自身が文化庁時代に文化財レスキュー事業などを通じてご経験された我が国の文化財緊急活動の現状と、今後の国内委員会設置に向けた展望などをご報告いただきました。
パネルディスカッションではすべての講演者の皆様の他に、日本博物館協会専務理事の半田昌之氏、国際イコモス委員の益田兼房氏、国立国会図書館主任司書の小林直子氏、東京国立近代美術館フィルムセンター主幹の岡島尚志氏にもご登壇いただきました。
特に東日本大震災の経験を踏まえて、それぞれの分野で緊急支援として何が必要とされているのか、またそのために日本で必要となっていくブルーシールドのあり方などについて進められ、今後の我が国での緊急支援活動を考える上で非常に重要な議論が進められました。
今回の研究会では、日本で初めて動産・不動産の両方でブルーシールドに関わる幅広い分野の専門家が集まり現状を踏まえた上で、将来的な選択肢の一つとしてブルーシールド設置を議論することができました。これはわが国の文化財緊急支援の将来を考える上で、重要な第一歩としての成果となったことと思います。
ご来場・ご協力くださいました皆様には厚く御礼申し上げます。
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