9月25日(日)、TKPガーデンシティ品川にて、文化遺産国際協力コンソーシアム設立10周年記念「文化遺産からつながる未来」(文化庁、国際交流基金アジアセンターと共催)を開催し、設立10周年の節目に、これまでのコンソーシアムの取組みを振り返り、次の10年を見据えた課題を議論しました。
シンポジウム冒頭で、主催者として宮田亮平文化庁長官、柄博子国際交流基金理事が挨拶した後、元文化財国際協力推進議員懇談会幹事長の古屋圭司衆議院議員からコンソーシアムやその設立根拠となる法律(「海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律」)の法案成立の経緯などを、その立役者である平山郁夫初代会長の思い出とともにお話いただきました。
その後、石澤良昭会長(上智大学教授)が、「文化遺産により世界の架け橋を目指す-コンソーシアム10年を振り返って-」と題し、過去10年間の取組みを紹介するとともに、日本が積極的に国際協力を展開することの意義を改めて説明し、国内関係者間のさらなる連携の強化の必要性等を呼びかけました。
続いて岡田保良副会長(国士舘大学イラク古代文化研究所長)が「文化遺産を支える人々の輪-混迷つづく国際社会の中で-」と題して講演を行いました。西アジアの紛争地域における日本の国際協力活動のあゆみと人材育成の取組みについて紹介を行うともに、資金調達の問題点や遺産マネジメントを担う人材養成の必要性など、現状の課題について言及しました。
さらに、宮廻正明氏(東京藝術大学教授)が「『クローン文化財』の文化遺産への活用と意義―デジタルとアナログを組み合わせた技術による人材育成-」と題して、最新技術による文化遺産復元技術を紹介し、今後の文化遺産の保存と公開についての提言を行いました。また、次世代への文化財の継承方法や海外への技術移転、さらに「物」から「人」への経済援助対象の転換、修復方法の統一等、日本が直面する文化遺産保護活動の課題について言及しました。
江島真也氏(国際協力機構企画部長)は「文化遺産保存に対するJICAの取組―誰一人取り残されない世界の実現をめざして―」と題して、2015年の国連サミットで採択された「2030アジェンダ」(2016年から2030年までの国際目標)で定められた「持続可能な開発目標」(SDGs)を踏まえ、 今後途上国において、開発と文化遺産保護を有機的に結びつけて国際協力に取り組んでいくことの重要性について論じました。
各講演の後、「コンソーシアムの課題と展望」と題して、関雄二副会長(国立民族学博物館教授)の司会のもと、ディスカッションを行いました。岡田、宮廻、江島三氏に、東南アジア教育大臣機構考古学・美術センター上級研究員のニュン・ハン氏と東京文化財研究所名誉研究員の青木繁夫氏が加わり、日本の国際協力の特徴、その特徴を活かした文化遺産国際協力のありかた、日本における次世代育成・教育普及などについて活発に議論しました。また、ニュン・ハン氏からは、画像によるミャンマーの文化遺産の現状について紹介があり、日本をはじめとする支援側諸国による調査団の派遣と人材育成の協力が呼びかけられました。
最後に、前田耕作副会長が閉会の挨拶に立ち、日本の文化遺産国際協力のさらなる発展のため政府も官民の諸機関ともどもにコンソーシアムに対してご支援、ご協力を頂きたいと呼びかけました。
今回のシンポジウムでは約200名の参加者があり、多くの方にコンソーシアムの活動とその意義、そして日本の文化遺産国際協力が抱えている課題について知って頂く機会となりました。
※プログラムや開催概要はこちらをご覧ください。
シンポジウム開催に関しましてご協力下さいました関係者の皆様、並びにご参加下さいました皆様に深く御礼申し上げます。
【写真説明】(上から)
1:文化庁・宮田亮平長官による開会挨拶
2:国際交流基金・柄博子理事による開会挨拶
3:古屋圭司氏による講演の様子
4:石澤良昭会長による講演の様子
5:岡田保良副会長による講演の様子
6:宮廻正明氏による講演の様子
7:江島真也氏による講演の様子
8:ディスカッション:司会の関雄二副会長
9:ディスカッション:ニュン・ハン氏によるプレゼンの様子
10:ディスカッション:青木繁夫氏
11:ディスカッションの様子
12:前田耕作副会長による閉会挨拶
13:会場に展示された「バーミヤン東大仏天井壁画」「法隆寺金堂壁画6号壁」復元パネル
14:会場の様子