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第34回研究会「学校教育と文化遺産」でいただいた質問に対する回答を公開しました

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第34回研究会「学校教育と文化遺産」で、参加者からいただいた質問に対する回答を公開いたします。


質問1

文化遺産の保護・活用の意識向上のために、初等中等教育段階で学習指導要領に欠けている点や、今は声高にいわれていなくても子供たちに伝えていくべき点は何か。

回答

学習指導要領にも、文化遺産の保護や活用の意識向上につながる学習が示されています。学習指導要領に準拠して、各教科領域で意図的計画的に実施されています。ただ、現場の感想としては、各教科には指導内容が多くあり、文化遺産の保護・活用の意識向上のための学習だけに重点をかけきれない難しさやもどかしさはあります。
子どもたちには、自分ごとで考えることの意味や意義を伝えていくべきかと思います。文化財は遠い昔のものということでなく、いまや未来の自分の社会となんらかのつながりがあることに気づかせたいです。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問2

東京都市部において、身近な地域の文化財学習のあり方として、どのような工夫(カリキュラム)が考えられるか。当事者でない者はどのような視点で学ぶべきか?
・観光客としての視点か
・持続可能な社会の担い手としての視点か

回答

文化財を、なにとするかによるかと思いますが、著名なものでなくてよいので子どたちの身近なところにある古くから大切にされているもの(こと)があると思います。自分の地域にあるものなら当事者の視点でそれが追究できます。教師は、授業でその事象を身近に感じさせる、自分ごとで考える仕掛けをつくる役目を担います。
どこの地域の子どもでも、当事者、観光客など、多様な立場の視点から多角的に学ぶことが大切だと思います。社会をみる視野が広がった学年で、持続可能な社会の担い手の視点が有効かと思います。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問3

SDGS 11.4でも文化遺産の保護・保存が取り上げられており、国内外の教育カリキュラムに具体的に組み入れられている事例はあるか。

回答

小中の社会科の教科書においても、ご質問に該当する具体例が扱われています。小学生〜中学生にかけて、身近な地域の文化財の保護保存活動から世界の文化財保護保存の事象に広がるよう、系統的にカリキュラムが整理されています。小学校教育の現場では、問題解決的な学習、体験的な活動を取り入れた指導の工夫が、一層求められています。とくに総合的な学習の時間では、各学校の地域にある文化財の保護保存に関わる事象は扱われています。地域の祭りや史跡など、地域の魅力を学ぶ学習の事例が多くあるかと感じています。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問4

実物にふれたり体験活動を確かな学びにつなげる手段はどのようなものが考えられるか (活動あって学びなしとならないように)。

回答

その対象に対して『問い』があることだと思います。なぜ?何のために?どのように?どうやって?といった疑問が沸くような出会わせ方(仕掛け)が確かな学びにつながるかと考えます。子どもの予想をこえるような認識のずれを生む事実の提示が手段のひとつになるかと思います。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問5

文化財を扱う教科(社会、美術、総合)と教科等横断の可能性は?

回答

教科の横断が十分にできます。むしろ教科横断的に扱うことが大切かと思います。各教科ならではの視点から、一つの文化財を多角的に扱うことも面白いと感じます。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問6

特別支援学校に通う子どもたちにも文化遺産の教育をしたい。現在の勤務校は肢体不自由の学校で、現地へ足を運ぶ機会を作るのは少々難しい。文化遺産に直接触れることができるアイデアはありますか。

回答

もうお考えかもしれませんが、博物館の出前講義を活用して、持ち込みのできるものなら実物に触れられることもできるかもしれません。自分は、博物館に申請して貸し出しの利用をしたことがあります。文化遺産に携わる方との現地からのリモート対話も身近に感じる手段かもしれません。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問7

学校教育と文化遺産(国際・国内共)の関係を今後も深めていこうと考えた時、学校教育の現場教員にどのようなことを期待されますか。

回答

子どもが文化遺産を自分ごとに感じられる仕掛けのある授業

(回答者:澤之向 達也氏)


質問8

実際に合掌集落を借りたい、移住したいと考えている人がどの程度存在するのかアンケート調査等を行っていますか?

回答

行政や守る会の方から、聞き取り調査はしました。移住の問い合わせは増加しているとのことです。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問9

総合・探究を中心とした学習で、図書資料を利用する際に、地方ほどネット資料利用が多いと想像しますが、学校図書館の整備状況はいかがでしょうか。紙とデジタル・データの利用の差は(学年にもよるでしょうが)ありますか?

回答

全体的にデジタルの方が増えてきているのは現状です。地域のことを学ぶ学習では、図書資料を扱います。図書館には文化遺産や郷土資料を扱うコーナーがあります。子どもも地域の具体的な情報を調べるときは、その棚にある図書を活用しています。教員も教材研究で使用します。小学校では平易な文章で書かれた子ども版の村史を、重宝しました。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問10

(澤之向先生へ) 世界文化遺産と共に暮す小学生が遺産の将来像を我が身に引き寄せて考えるすばらしい授業。落としどころを設定せず、自由に発言・討論させる手法に感心しました。その後、子供たちは何か実践に向かったり、効果は現われましたか。

回答

自分の住んでいる合掌造りについて改めて調べたいと思い、自主学習で、図書館の本をかりて合掌の構造を調べる子どもがいました。また、事後の合掌造りの屋根組み体験では、自分から縄の巻き方を研究し、家庭で練習してくるほどでした。翌年には、地域の屋根の茅葺きのボランティアに参加する子もいました。当該地区以外の子どもの参加もありました。
実践の2年後におこなった六年生の授業では、他校の小学生と世界遺産について交流をしました。オーバーツーリズムの課題を感じつつも、世界遺産の魅力を熱く語る姿が印象的でした。また、他地域の世界遺産に対する興味関心も高くなり、それらの文化遺産を保存する人たちの取り組みを共感的に捉えることができました。

(回答者:澤之向 達也氏)


質問11

(小林先生へ) 学校知と日常知を媒介するものとしてのマンガの活用について、他地域に適用する際に、資金面、人材面の確保などについて、何かご意見があればお願いします。

回答

 人材面に関していえば、マンガ制作の段階でふたつの方法が想定されます。ひとつ目は、日本のマンガ家やイラストレーターによる、いわゆる日本マンガ風の登場人物や作画による制作です。ふたつ目は、現地のマンガ家やイラストレーターによる、現地で流通しているスタイルでの制作です。いずれも異なるかたちでの国際交流や相乗効果が期待されます。資金面に余裕があれば、日本と相手国のマンガ家による共同制作も想定されます。
 いずれにしても、①マンガを作る際のシナリオづくり、登場人物や舞台の設定などの段階で、現地の人びと(教員、保護者、生徒)にどのように関わってもらうか、②マンガを制作したあと、それを教材としてどのように教育に用いるか、という展望が重要になると思います。
 マンガ制作にはかなりの予算が必要となります。若手アーティストと連携することができれば、作画に要する予算を抑えられるだけでなく、彼ら彼女らの経験と実績づくりにもつながると考えます。

(回答者:小林 貴徳氏)


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