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令和5年度シンポジウム「世界文化遺産の50年:日本の貢献のこれまでとこれから」を開催しました

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 文化遺産国際協力コンソーシアムは、1月20日に文化庁・外務省との共催で令和5年度シンポジウム「世界文化遺産の50年:日本の貢献のこれまでとこれから」を開催しました。一昨年に採択50周年を迎えた世界遺産条約を記念して、基調講演にユネスコの文化部門を統括するエルネスト・オットーネ文化担当事務局長補をお招きしました。
本年、世界遺産登録30周年を迎える「古都京都の文化財」を擁する京都市内の京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホールを会場に選び、コンソーシアムが主催するイベントとしては初めての京都開催となりました。会場のホワイエでは、コンソーシアムの地域分科会や関係機関の協力を得て、日本が世界各地で行っている文化遺産国際協力事例の特別展示も併せて行いました。
※シンポジウムの開催概要・プログラムについては、こちらをご覧ください。
※特別展示の内容・掲示物についてはこちらをご覧ください。

 シンポジウムは、青柳正規(文化遺産国際協力コンソーシアム会長)の開会挨拶で始まり、国内外から500名を超える参加申込があったことを受けて、コンソーシアム主催のイベントのなかで取り分け高い注目をいただいたことと基調講演を引き受けていただいたユネスコのオットーネ事務局長補への謝辞が述べられました。続いて、50周年を機会に世界遺産という制度の発展を振り返り、その中で日本が果たしてきた役割、そして今後果たすべき役割をあらためて考えるきっかけとしたい、というシンポジウムの大きな目的が示されました。
趣旨説明は、藤井郁乃(文化遺産国際協力コンソーシアム事務局アソシエイトフェロー)が行い、世界遺産条約の特徴と50余年の間の制度運用の変化を時系列に整理しながら2部構成のプログラムの概要を説明するとともに、世界遺産保護の第一線で活躍する登壇者の略歴と講演内容のプログラム上の位置づけが紹介されました。

 第一部は「世界遺産条約と日本の貢献」をテーマに、2本の講演とディスカッションを行いました。
エルネスト・オットーネ氏(ユネスコ文化担当事務局長補)による基調講演「世界遺産制度の持続的な実行における日本への期待」では、世界遺産条約の採択50周年にあたり、同条約の履行に関わるこれまでの日本の活動に焦点をあて、特にユネスコ日本信託基金による継続的な支援や日本が中心となってとりまとめた遺産保護の規範である「奈良文書」が重要な役割を果たしていることが強調されました。一方、気候変動に伴う自然災害の激化や、乱開発や紛争といった人災の複雑化によって各国の遺産保護は一層の困難に直面するようになっており、国際社会が50年後、100年後を見据えた遺産保護活動に取り組む重要性とともに日本が他国をけん引するような活動を続けていくことへの期待が述べられました。
 続く稲葉信子氏(筑波大学名誉教授)による講演「世界遺産条約と日本の貢献、アジアから声を発する意義と日本の役割」では、稲葉氏が文化庁職員として関わった1994年の「オーセンティシティに関する奈良会議」とその成果として起草された「奈良文書」の内幕に触れ、オーセンティシティとは元来、それぞれの社会と時代の在り様に属するものであり、ゆえに様々な人々が様々な時にオーセンティシティを語ることができることに意義があり、また国際社会にはその声を聞く義務があることが述べられました。
  ディスカッションでは、西和彦氏(文化庁文化遺産国際協力室世界文化遺産部門主任文化財調査官)をモデレーターに、オットーネ氏と稲葉氏の対談形式で行いました。オットーネ氏からは、インターポールとの連携のもとで展開している不法輸出入文化財のバーチャル博物館などのユネスコによる昨今の文化遺産関連の取り組みが紹介されるとともに、文化的多様性とその相互理解の強化が今後の社会の発展において重要な鍵となる認識が示されました。その中でアフガニスタンなどの紛争地域での日本の遺跡保護救済の取り組みにも触れ、その国際的な意義を強調されるともに日本による継続的な貢献への期待が寄せられました。

 第二部は「世界遺産保護における日本の実践」をテーマに、日本の専門家による2本の講演とディスカッションを行いました。
庄田慎矢氏(奈良文化財研究所企画調整部国際遺跡研究室長)からは「文化遺産の研究・保護に関わる技術移転の取り組み」と題し、カザフスタンやウズベキスタンで庄田氏らが取り組んだ出土遺物の調査・記録・保存に関する技術移転を目的とした事業について、当事者目線からの成果と今後の課題が報告されました。また講演の最後には、昨年12月から取り組まれている、戦禍により多くの遺産が失われつつあるウクライナへの支援事業についても紹介されました。この支援事業で来日し、シンポジウムに対面参加していた3名のウクライナ人専門家がステージ上で紹介され、会場からは大きな拍手が送られていました。
熊田順一氏(JTB総合研究所 主席研究員)からは「持続可能な観光が世界文化遺産に果たす役割」と題し、国連世界観光機関(UNWTO)のシニアオフィサーとして関わっている国連が提示する持続可能なツーリズムの考え方が紹介されるとともに、熊田氏が世界遺産・ペトラ遺跡公園(ヨルダン)において実践している地域コミュニティとの協働で進める観光開発の事例が報告されました。
ディスカッションでは、2名の講演者のほか第一部の稲葉信子氏に加えて畠山健太郎氏(外務省大臣官房国際文化協力室長)をパネリストに迎え、再び西和彦氏をモデレーターに、これから日本が世界遺産をはじめとする各国の文化遺産の保護や開発にどのように貢献ができるか、またそのために解決すべき課題をテーマに、会場からの質問を交えながら活発な議論が展開されました。

 最後に、岡田保良 (文化遺産国際協力コンソーシアム副会長)より、コンソーシアムが引き続き、世界遺産に関する議論の土台を提供していくことと、文化遺産国際協力に貢献する人材の受け皿となっていくことを謳った閉会挨拶があり、全てのプログラムを終了しました。

 本シンポジウムは、京都会場に足をお運びくださった方々、国内外から広くオンライン配信で視聴くださった方々をあわせると、約570名というコンソーシアムの歴史の中で最も多くの方々にご参加をいただいたイベントとなりました。本シンポジウムの開催にあたり、ご協力いただいた関係各位、ならびに参加者の皆様に対し、主催者より改めて御礼申し上げます。

※後日、本シンポジウムの報告書も公開予定です。また、シンポジウムを収録した動画も、コンソーシアムYouTubeチャンネルにて公開する予定です。どうぞお楽しみに。チャンネル登録もぜひお願いします。

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